本に書いてある失敗を学べばよい?
小学生が微分積分の問題が解けないことを,「失敗」とは呼ばない。
幼稚園生が「恋愛の失敗」の話を聞かされても,「失敗の本質」を理解することは不可能である。
「失敗の本質」がわかっていない大学のセンセイが,「教育の質」を致命的に落としていることを危惧する。
教育現場から逃げ去ったことも,「失敗」ではなく,むしろ「大成功」である。
今まで,まともな教育者で,「本を読めばわかる」と訴えた人がいただろうか?
「本を読んでもわかることはないが,本を読んでおかないと,話にならない」ならまだわかる。
もちろん,個人の体験談だけを載せてある本ではダメだし,
過去のセンセイたちが書いたものを引用の断りなしにパクりまくっている本でもダメである。
教育の世界に限った話ではないだろうが,人間は,自分が実際に経験してみて,
失敗してみて,初めて「学ぶ」ことがいくらでもある,という最も大切なことを,
人生の先輩から一度は耳にしたことがあるはずである。
本を読んでわかった気になって,自分が成功した気になっている人間ほど,おそろしいものはない。
人間には,他人に語れる失敗と,語りにくい,あるいは語れない失敗というものもある。
「実証的なデータがある」という断り書きだけで,どこにも「実証的なデータ」が掲載されていない本は,
虚偽データで好き勝手言う本よりはましであっても,信頼性はゼロである。
ある本を読むと,編集者がいつも口で言っていることを,自分が経験したことのように書いているものがある。
人の話を鵜呑みにして,現実の場面で自分が置かれている状況がわからない人間がいるのが学校現場の特色でもある。ただでさえ自己判断力の乏しい人間から,判断力を奪うセンセイほどおそろしいものはない。
日本の大学院がどの程度のものか,どこかアジアの途上国の先生に看破してもらえないものだろうか。
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