やはり,「一人も見捨てない」という言葉の正しい意味は,「俺以外の人間が見捨ててきた子どもは,俺は一人も見捨てない」という意味だった
現在の教育システムは早く崩壊した方がよい,と主張する大学のセンセイがいます。
退職が近づくにつれ,嫌気が指している今の大学やその同僚たちへの悪態の口数も,さらに増えてくるのでしょう。
成績が上位2割と下位2割の子どもに,今の教育システムは対応していない。
だから,崩壊してしまえ。
この薬は,6割の人にしか効果がないから,捨ててしまえ。
その代わりに,今まで薬が効かなかった4割の人に,もっと運動をさせろ。
薬は使わない。
・・・薬をたとえに使うと,どこか「良さそうな感じ」もしてきますね。医療費の削減を大前提に考えるのであれば,6割の人を救ってきたものを廃棄して,救われなかった人たちには「自己責任」を押しつけてしまうという方法がとても魅力的に感じます。
教育研究の専門家が怠ってきたというか,能力がなくて開発できなかったのは,
「お金をかけて教育の成果を出す」という仕組みの提案です。
タブレットを導入すれば,成績が上がる,などというのはただの幻想ですし,
電子黒板を使えるのが,限られた教師の限られた授業では,意味をなさないでしょう。
私が使ってみた感想から言えば,電子教科書も,今のシステムでは,現場ではほとんど機能しないでしょう。
なぜなら,電子教科書は教師が使うことを前提に作られているからです。
子どもが使うことを前提として電子教科書を作らないのは,なぜでしょうか。
教科書会社の生命が脅かされるからでしょうか。
紙の教科書は貸し出し方式にして,学校に備え付けにする。
電子化された教科書に,アンダーラインを引いたり,自分で問題集化してしまったり,課題の答えを記入していったりするなど,「学習履歴」の電子データが逐一集まる仕組みをつくれば,本人確認さえしっかりできていれば,評価の手間も相当省けます。
しかし,そういう提案を実現できる力のある政治家がいない。
教員養成の仕事をしている人たちがやっていることは何でしょう。
教材作成能力が鍛えられない教員養成系大学を出ても,現場の教師として役に立たないのです。
社会学のまとめのプレゼンを頑張った人,歴史学の現地調査のレポートを上手に仕上げた人,統計学の課題を毎時間きちんとこなしていた人たちが,現場で活躍できるのです。
これからの教育はこうでなくてはならない,一斉授業はこうだからだめだ,なんていう理想論を延々と一斉授業で聞いてきただけの人間は,現場では本当に役に立たないのです。
私がかかわってきた優秀な教師たちはなぜか,教育学部以外の学部の出身の人ばかりです。
そして,逆に,この人,ダメだな,現場では使いものにならないな,と感じる大学のセンセイは,みんな,教育学部の出身の人ばかりです。
教育学部というところに,本質的な問題があることは,私の個人的な感覚からは明らかすぎることで,実はその世界に入って検証することが可能なチャンスがあったのですが,今ではそれが実現できないかったことにほっとしている次第です。関係者の方には,多大なご迷惑をおかけいたしました。心よりお詫び申し上げます。
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