「わからない人」「批判的な人」を排除する人間が語る「だれも見捨てない」教育とは
お友達連中で成功体験を喜び合うことは,決して悪いことではない。
小学校という教育現場では,教師一人一人の孤立傾向が強いため,「自分は研究熱心」と自画自賛したい教師たちは,同僚との結びつきよりも,学校外の教師たちとのつながりを大切にする。
学校内では浮いた存在でも,仲間と一緒なら頼りにされる満足感も得られる。
もちろん小学校の中には,力のある教師が若い教師たちを育てる環境が整っているところもあるだろう。
そういう学校の教師なら,放課後にいそいそと外部に出かけていく時間などないはずである。校内に指導対象となる教師はいくらでもいるから。
中学校のように,学年全体・学校全体で共通理解をもつために情報のすり合わせをしなければならないところは,横だけでなく縦のつながりも軽視できなくなる。
だから,「わからない人」「批判的な人」を仲間はずれにしている余裕はない。
そういう教師を放置しておくと,不利益を被るのは学校全体=子どもたちと自分たちということになる。
「あいつらに,俺たちの言っていることの意味なんかわかりゃしないだろう」という話法は,たまたま組合活動の中心部の教師たちに,総合的な学習の時間の動かし方をレクチャーしに行ったときに耳にしたものである。
「おいおい,私も『あいつら』の一部なんだけど・・・」とは言わなかったが。
排除指向が強い人間ほど,口では「生徒のため」「子どものため」などと言っておきながら,
実質的には「自分たちと同じ考えをもっている教師のため」にしか動いていないという姿を嫌と言うほど見てきた。
総合的な学習の時間がなぜ大切になってくるのか,移行期間の実践からの成果をいくら説いても,「負担が増える」の一言で聞く耳を持たない教師もいた。「すべての子どものために」という看板は,ただの飾りでしかなかったのである。
そもそも「生徒のため」なんていう言葉は,教育に携わる人間だったらわざわざ口に出すまでもなく,当たり前すぎる前提の姿勢である。
そういう言葉をわざわざ口にするタイプの人間ほど怪しい奴はいない。
言葉に酔いやすい人間が集まっている教育のグループでは,「感動話」に花が咲く。
そこで同じように花が咲いている「敵集団の失敗話」が表に出ることはないだろう。
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