3年間の行政経験をふり返って
行政に身を置いていたのはもう10年以上も前のことだが,
新しいことを始める難しさを2つの意味から実感することができた。
一つは,前例のないことに取り組むための準備の大変さ。
もう一つは,反対意見を押し切って強引に進めることの非情さ。
これらには,共通した「背骨」がある。
隙のない「文書」の山である。
非効率の象徴のようなお役所には,
効率などといったものに全く価値を置かない山のような「想定問答の紙」がある。
何人もの目を通してつくられた「想定問答集」は,
だれからも質問が出ないでそのまま机にしまわれる運命のものもあるが,
ここに様々な「英知」が詰め込まれているものだと思ってもよい。
どうせなら,問答集をそのまま公開すべきだと思うタイプの人間が私だった。
非効率,杓子定規,縦割り,などと揶揄されるお役所仕事だが,
最近,「お役所仕事気取り」で行政の真似事をしようとする人が増えている気がする。
とんでもないことである。
「文書」がどのような意味をもっているか,それがつくられるまでにどのような法令や答申や審議中の意見の山に目が通されているか,経験のない人には想像もできないかもしれないが,それがわからない人が「なんちゃって文書」を作っても,何の意味もないことを実感していただきたい。
「文書」のための「文書」という嫌な言い方もあるが,
そこには2つの意味がある。
カッコをつけたいだけの場合。
「背骨」の位置を忘れないためにある場合。
背骨のない魚がうようよ泳ぎ出して流されていく先にあるものは,何だろう。
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