火災調査官のお仕事
今日は,身近な地域の調査を実施した地域の消防署を訪問し,さまざまなインタビューをさせていただきながら,「防災」に関する学習の在り方を検討してみた。
生徒が調査を通して感じた疑問の中に,「実際の火災,特に,消火が困難そうな場所での火災を想定した消火活動のシミュレーションを実施しているか」というものがあった。
火災調査を専門とした方のお話では,やはり現地を歩いて実際の消火栓の位置を確認することが大事だということだった。
車を利用して巡回するのではなく,「歩く速度で見ないと,見えないものがある」とのこと。
身近な地域の調査を実施するときに,紹介したいエピソードの一つである。
火災調査では,火災を起こしてしまった方からその場の状況などを聞き取って,A4用紙にして,厚さ1cm弱くらいの書類に残しているそうだ。
個人情報保護の観点から,中を見せていただくことはできなかったが,昭和40年代の記録が入った封筒を持ってきてくれた。現在ではマイクロフィルムにおさめられているというが,こういう資料は,実際に作った人の息づかいが伝わってきそうな現物があることが重要であるような気がする。
何でもデジタルデータ化することを推奨する人もいるだろうが,データが飛んだらそれで終わりだし,何よりも大切な何かが伝わってこなくなる。
私たち教師が子どもに伝えようとしているものは,デジタルデータでも伝わるコンテンツだけではないのだと改めて実感することができた。
よく話に耳を傾け,自分の目でじっくり観察するが,100%これが原因だということは決して分からないという姿勢で臨むという火災調査。
人はウソをつくこともある。
それが証明されるような物的証拠になるものも見えることがあるのだろう。
次の火災を防ぐために,公開できることはできるだけ公開したいが,個人情報保護も大切。
こうしたジレンマを抱えるのは教育現場も同じである。
聞き取りをしている間にも,「車両火災」が発生し,ポンプ車(一般に消防車と呼んでいるもの)が出動した。
情報が入ってから1分以内の出動だった。
延焼がなく,火災調査官の方が退席されることはなかったが,こういう「現場感覚」は学校も似たようなところがあると感じた。
教育実習中に,実習生にはかかわれない生活指導や進路指導の場面が突然訪れることがある。
私はこういうとき,実習生にとってはかけがえのないチャンスだと思い,その場にいさせて指導の実際を見てもらった。
私たち教師にとっての「火災調査」は,すべて子どもが聞き取り対象となる。
どういう姿勢で子どもから話を聞くのか,研修で学べる場はない。
なぜAさんとBさんで私(教師)の態度が異なるのか,その理由は10枚とか20枚の書類に目を通してもらった上に,AさんやBさんの話の受け止め方の違いがわからないと理解できない。
「調査」がどれだけ大切なのか,火災予防も,積極的な意味での生活指導も,同じようなものなのだという意識をお土産にいただいた1日だった。
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