教育や研修の費用対効果
企業で役に立たなかった人が,学校現場に入ってやたらに気にかけるようになるのが,教育の「費用対効果」の問題である。
今後,段階の世代がいなくなって,学校現場が若い人たちであふれるようになると,費用対効果が一気に上昇する見込みがある。
それは,学校ではベテランの方が若手よりもより多くの成果や教育効果が出せるとは限らないからである。
逆に,部活動などでは若い教師が増えた方が,子どもたちに高いモチベーションを与え,成果が出しやすくなるかもしれない。
人件費が大幅に減るだけで,費用対効果は向上するのである。
若い人を短いサイクルで辞めさせてコストを削れるだけ削るレベルまで厳しい企業から,学校現場に入った人には,「コスト感覚のなさ」に唖然としてしまうだろう。
税金は,決められた額の範囲内なら,いくらでも使えるのである。
予算をとったら,無駄とわかっていても使うのが,この無駄な世界の常識である。
企業で本当の意味で存在意義を発揮して人間なら,たとえ損を出していても,効果だけを追求していただろう。
教師個人個人の能力について言えば,研修にかける時間と能力の向上は,個人によって大きく異なる。
たとえば,小中連携がなぜ必要なのか,その意味や意義がわかっていない人が研修の場にいても,それはただの時間の無駄になりかねない。
普段接することのない人が近くにいるだけで,さまざまな刺激が得られる人にとっては,機会を与えられただけで効果がある。
行政の側からすると,その場で何が話されようが,みんな寝ていようが,「小中連携の会を何回開いたこと」という事実に意味がある。
なぜなら,「小中連携の会を開いても意味がない」という声がもし聞こえてきたら,責任を小中の管理職により重くのしかけることができるからで,失敗しても成功しても,監督者の立場からは成功になるというからくりがあるからである。
研修というのは,やはり主体的な態度で参加することで初めて意義があると言えるものである。
本来の研修の趣旨とは別の目的をそこで探してもよいということ。
時間を無駄にしない態度というのは,その本人自身にかかわっているのである。
「今回の研修は,本当に意味がなかった」と感じている教師は,
きっと,「今日の授業は,本当に意味がなかった」と子どもに実感させる教師であるに違いない。
「自ら意味や意義を見いだす」ことを教育の指針に掲げていない教師は,自らもそういう態度を持ち合わせていないのだろう。
教員採用試験の演習問題。
ある教員が,「今日行われた小中連携の研修は,本当に意味がなかった」と愚痴を言っているのを耳にしたあなたは,どのような言葉をその教員にかけたいですか?
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