小中学校・新学習指導要領に示された,吐き気を催す教科目標の冒頭部分・・・「~な見方・考え方を働かせ」
新学習指導要領の改正案が公開され,3月15日まで,パブリック・コメントが募集されている。
ほとんどの人が首をかしげるであろう問題は,すべての教科の目標の冒頭部分に登場する,
「~な(~の)見方・考え方を働かせ」という文言である。
私の場合は,これを読んで,吐き気を覚えた。
「バカの一つ覚え」という言葉がぴったりである。
言語にしろ,数学にしろ,音楽にしろ,まず,何をしないと始まらないかを考えてみてほしい。
本当に「見方・考え方」を働かせることができるようになるためには,
何が必要とされるのかを,言葉が通じない外国人に説明するところから始めて見てほしい。
ずーっと「見方・考え方」の整理をしながら検討を続けていた人たちには,よく理解できないことかもしれない。
「~な(~の)」の部分にあてはまるものには,実は無限に近いものがあり,適切な見方・考え方を適切な場面で働かせることができるようになるには,ある見方・考え方しか働かせられないような場面を繰り返していても絶対に無理なのである。
新しい学習指導要領が想定している「はっきりと身につけさせたい能力」があって,「それを身につけさせた気になる」ような指導をしてみたところで,「その場限りの意味」しかないことに気づけなかったのだろうか。
マニュアルでアルバイトの従業員を縛る場合,従業員に課せたれた任務というのは極めて単純なものであり,「想定外」の問題はきっと正社員が対応することになる。
ちょっと複雑な問題に直面して,その正社員ですら,「こんなことを解決する能力は身につけさせられていない」といって職場放棄するような事態を招かないようにするための教育だとは思えない。
単純化が好きな人たちが寄せ集められたことで,「教科」が持っていた意義が解体されてしまった印象が強い。
目標がおかしなものになって,教科指導が機能するわけがない。
学習指導要領よりも先に,その解説を公開すべきである。
解説を読むことで,もともとの学習指導要領の問題が明確になるはずである。
こんな話をしても,通じそうにないのが歯がゆくて仕方がない。
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