昭和を生きた「厚かましき」人々
昭和20年=1945年は,日本にとって,とてもとても大きな区切れ目となった。
海外からは,「戦後」という時期区分の異常さを指摘する向きもあるようだが,
それでも「戦後」は「戦後」であろう。
太宰治の『走れメロス』が発表されたのは,いつのことか,ご存じだろうか。
中学校の教科書に掲載されているから,あらすじを聞くだけで,内容をすぐに思い浮かべられる人も多いだろう。
1930年代の後半から1940年代の前半にかけて,
国民には,「国家への奉仕」が強く要請されていた。
(『公共』という科目が生まれそうな,これからの社会と似たような時代である)
こういう情勢下でものを書かなければならなかった時期と,
戦後の自由で縛りのない社会の中で何でも書ける時期とを比べると,
どちらの方がつらかったのだろうか。
人間には,縛られること=一定の自由を奪われることで,
適度な居心地の良さを感じてしまう部分がないだろうか。
自由に耐えうる力というのは,決して軽いものではないはずである。
自由に耐えうるたくましさを発揮した人を「厚かましい」と表現すると,
「厚かましい」生き方をしてきた昭和の人たちが,
「厚かましい」まま生きられる社会であった方が,
平和が保たれるのではないか,と思う一方で,
この「厚かましさ」のせいで,日本から子どもがいなくなるのではないか?
という心配もある。
孫の世話ができる段階の世代の人たちは,どれくらいいるのだろう。
孫世代の面倒を見ようとする人,面倒を見る余裕がある人,その幸せを願える人たちが
いなくなり,「厚かましい老人」ばかりの国になってしまったら・・・。
佐藤愛子著『それでもこの世は悪くなかった』(文春新書)への佐藤優のレビューを読んで,頭に思い浮かんだことを書かせてもらった。
価値観の一変を経験した世代が,この社会に残してくれるものは何だろう。
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