感情移入を武器にする教育
「感情移入」とは,文学の世界では,自然物など「非情」の世界へ人間感情を持ち込むことを指している。
「主観の導入」を捉える上で,とても重要な概念であるようだ。
単なる「錯覚」に過ぎないと切り捨てるのではなく,人間にしかできない,人間の原始的機能の本質につながるものとして捉えることで,AIの進化にも影響を及ぼす武器になるかもしれない。
外山滋比古先生は,アナクロニズム,地理的誤謬,感情移入を包括する概念として,
「コンテクスチュアル・ファラシー(『場』の錯覚)」という言葉を挙げている。
3つに共通するのは,
>第一の条件が,理解者と対象との間にコンテクストのずれが認められること
>第二の条件は,二つのコンテクスト間の理解伝達が十分に行われにくいという印象を与えることである。さらに,それを解消するにあたって,理解者側のコンテクストの主観的要素が対象のコンテクストへもち込まれる・・・これが第三の条件である
合理性や正当性という点から疑われることも共通点である。
「思い込み」という言葉で否定的に見られてしまう「理解」に対して,『場』の錯覚は,
「文化」を大切にしようとする立場からは,あくまでも積極的な意義として語られている。
「主体性」を育てようとしている教育の研究で,大切にしたい点は,
「理解者」=生徒のコンテクストの主観的要素が,「教育内容」=対象のコンテクストへ持ち込まれるプロセスである。
今までの日本の授業研究の歴史では,45分とか50分の授業を通して,その様子を見学し,検証し,解明してきた積み重ねがあるはずである。
大勢で正解にたどりつき,「みんなでがんばりました!」などという満足感を得て終わるような
(昔,運動会の徒競走で,順位をつけないために全員手をつないでゴールする,なんてことをさせた学校があったようですが・・・)
教育ではなく・・・・
「主観的要素」を重視してあげることによって,何が育つのか。
「主体性」を重視する方針を掲げるのであれば,「何が育つのか」をしっかりと語れる準備を整えておく必要がありそうです。
「どうせ格差は埋まることはない」と諦めきった似非ガクシャに惑わされないように・・・。
なお,感情移入の危険性について述べたこの2倍分の内容は削除いたしました。
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