高校地理には人材がいない?
高校では,どうやら「地理総合」が必修になりそうなのだが,学校現場では,
「地理総合」を高度な専門性と高い意欲をもって教えられそうな教師が少ないことが危惧されている。
地理学科を卒業して教師になっている人が少ないことが大問題であると・・・。
本当にそうなのか?
私は地理学ではなく日本史が専門だったが,教職の単位をとるために,地理関係の講義もたくさん受けた。
骨は折れたが英語でアメリカの人文地理を学んだときには,一挙両得の気分になったことを覚えている。
地震研究所の先生方による講義も受けていたから,自然地理もそれなりに理解できた。
もちろん歴史関係の単位もたくさんとったが,私の場合,卒論のテーマになるような内容は,高校の教科書などには1行も触れられていないものであり,大学での専攻がそのまま高校や中学校での教育に使えるかというと,そういうわけではない。
地理学科を卒業すると,それだけで高校の地理が教えられる,という論理は,単純には理解できない。
歴史学科を卒業しても,それだけで高校の歴史を教えられるとは言えないはずだからである。
弁護士さんが裁判関係の模擬授業を学校現場でやってみると,授業は教育実習生よりも下手くそだということが起きる。それはなぜか。
授業は,自分が知っていることを子どもに伝えればすむような話のものではないからである。
教師に求められる教科の専門性というのは,簡単に言うと,教科書に掲げられているタイトルの内容を,教科書本文は見ずに,いくつかの参考図書から整理して自分なりに説明できるような力があるということである。
もっと言えば,教師の仕事とは,教科書の内容の解説をすることではなく,教科書の本文には書かれていない「おもしろい内容」を,生徒がいくつかの資料を使って調べたり考えたりしながら,「やはり教科書に書かれている内容は重要なのだな」と気づかせることができるように導いてあげることである。
何を専門にしてこようが,大事なのは,その人が「おもしろい素材」を探し出し,「考えるきっかけ」をつかむ習慣を身につけているかどうかである。
だから,地理総合だろうが,歴史総合だろうが,(私は個人的には「地歴総合」という学び方をさせたいものだが)教科書ベースではないもので,どれだけおもしろい授業が構成できるかが大切なのである。
地理の人たちの心配を聞いていると,その地理の人たちがとても心配になるような話になっている,ということである。
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