大川小の教師たちを非難することは簡単。だが,自分たちも同じことをしているかもしれないという自覚をもつべき。
自分と同じことをしている人間を非難する人たちをときどき目にする。
自分の机の周りは散らかし放題なのに,他の人たちが整理整頓できていないことに文句ばかり言っている人。
電車の中で,自分が周囲の人の邪魔をしているのに,自分にとって邪魔な人に対して怒っている人。
教育ブログでもおなじみの,人の悪口しか言わないのに,自分が悪口を言われるとキレる人。
大川小の教師を非難している人たちの中に,似たようなのはいないか?
「山に登って子どもが怪我したら,だれが責任取るんだ?」
という脅し方を教頭にした教師がいるという。管理職をそういう方法で脅す教員はいないか?
「津波が来ないかもしれないのに,子どもを危険な目にあわせるわけにはいかない」
という発想。
「全員がバスに乗れないのだから,乗れる子と乗れない子がいるのは不平等だ」
とあくまで「一人も例外を出さない」ことにこだわる教師。
「一人も見捨てない」などといって,「ほとんど全員を殺してしまう」タイプの教員はいないか?
命の危険をともなう決断ではなかったが,
実は私も「教員の意見が分かれる」同じような場面を震災当日も,翌日も経験している。
校外に出かける行事中で,電話も不通になったため,引率主任や学年主任は「上からの指示」がもらえない状態に戸惑っていた。
私は「今,そんなものは必要ない。現場にいるあなたが最高責任者だ」と主張したが,引率主任はいつまわってくるかわからない公衆電話の長い列の中にずっといた。
学年主任は迷っているだけだった。
決して責任を取るのが嫌だったというわけではなく,決断するのが怖かったのだろう。
自信がない。だから,決断しない。これで助かってきた経験がマイナスに働いてしまったのだ。
状況は,大川小とほとんど同じだったのである。
避難できる高い建物はどこにもない。
そもそも,地震で倒壊する可能性があるといって,建物の中には入れなかった。
そういう状況だったが,避難できる場所を発見して,実際にそこに移動するまで気の遠くなるような時間が必要だった。
大川小では,低い川の方向に移動してすぐに津波がやって来たので,最後尾にいた教員や子どもはわずかだが助かったらしい。
ということは,もう少し長く校庭でもめていたら,全員が山に登って助かった可能性もあった。
だから,一概に「教員たちがもめていたこと」が原因とも言えず,「低い方向へ移動したこと」が直接的な原因だったとも考えられる。
管理職の指示や命令をきかないタイプの教員は,昔はたくさんいただろうが,
徐々に減ってきているはずである。
逆に,管理職の指示がないと,何もできない人が増えていないか,そっちの方が心配である。
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