「日本の教育界ではビースタがブーム」という乖離度
ガート・ビースタという教育学者を知っている「日本の教育界」の人はどのくらいいるのだろうか。
学者の世界の「翻訳文化」は明治以来,変わっていない。
大切なのは,「日本で紹介する価値のある学術書」を選別する眼力なのだろうが,
ビースタという教育学者に関しては,中央に関与していない人たちにとっては「当たり」なのだろう。
逆に言うと,
>政府とは選挙という多数決原理の結果であり,典型的な集約的モデルである。だから政府による教育内容の決定は,何が最善かを議論した結果ではなく,特定の利益を代表している。このような特定主義的な決定を超えて,多様な教育要求に基づきながら熟議を生みだし,教育内容を民主主義的に決定していくことが民主的教育の課題である
と主張している学者は,政府から見れば注目されない方が望ましい。
『よい教育とは何か』(白澤社)というタイトルは,原著を直訳すれば『測定時代のよい教育』となる。
エビデンスを示すための『測定』結果が,教育の世界ではどれだけ一面的であるかは,はるか昔から日本では承認され続けてきたことだった。
それを世界ではわざわざ批判的に扱わざるを得ないほど,『測定時代』に突入しているわけである。
その『測定世界』に日本が入ろうとしている。
中央の人が喜ぶような本は,翻訳が非常に読みにくい。
本当に心から賛同している人が訳す本は読みやすい。
専門書ではあるが,短時間に読めて内容が理解できたのは,訳者のおかげである。
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