デジタル教科書の使用が招く学力低下
私が考えるデジタル教科書の大きな欠点は次の2つである。
両方とも,電子書籍の欠点と同じである。
まずは,画面が小さいこと。
もちろん,タブレットでは指先の操作だけで「拡大」することができるが,拡大すると見える範囲は狭くなってしまう。
もう1つは,ページをパラパラっとめくりながら,「ここを読みたい」というところにすぐに飛べないこと。
教科の中には,「他の単元のページに飛ぶ」必要がないものもあるかもしれないが,
電子辞書と紙の本の辞書との違いのように,必要がない場所も「通過」しながら目に入っている方が,「調べる」活動として優れていると思われる。
社会科の地理や歴史では,他の地域,他の時代との共通点や相違点を探そうとするとき,1ページ1ページめくるのではなく,20ページごとに内容を比べるなどという作業が必要になったりする。紙の本でないと難しい。
紙の本にも欠点はある。
大きい,重い,お金がかかる。
しかし,電気を使わずに読むことができる。
デジタル教科書の本格的使用が始まると,子どもたちは
「ノートに書く」という基本的な作業をしなくなるのではないか,という心配がある。
タブレットの画面上で,「なんとくわかった気になる」だけで,実際には理解しておらず,どんどん授業が進んでいく,という事態も考えられるだろう。
「ノートに書く」作業を通して,自分がわかっているかわかっていないか,考えることができているかどうかが自分でも判断できるが,電子書籍の利用で,「わかったつもりになる」子どもが増えてしまうことを心配している。
« 尾木ママは名誉毀損の罪を犯したか?~その2 | トップページ | 中学生やその保護者が求める「教員の質」が低下する最大の理由 »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「ニュースより」カテゴリの記事
- 止まらないビールの需要減(2018.12.30)
- 五輪ボランティアの数字を見て(2018.12.27)
- 南青山に似た環境の公立学校は,頑張った。(2018.12.23)
- 愛校心によって大切なものを失った経験から(2018.12.16)
「学習指導要領」カテゴリの記事
- なぜ新しい学習指導要領が失敗に終わることがわかっているか(2018.01.17)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
「教育改革」カテゴリの記事
- 改正教育基本法第16条の問題点(2018.12.28)
- 今,手を抜いていると,公教育の民営化が本格化したとき,・・・(2018.11.24)
- 国後島で考えたこと~日本の教育(2018.10.02)
- 都合の悪いことに目を向けさせなくする教育(2018.09.08)
「リーダーシップ」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- マリオが総理大臣ならピカチュウを防衛大臣,ハローキティを外務大臣に(2017.12.02)
- 「大人になったら教師はいなくなる」は大間違い(2017.11.27)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
「歴史学習」カテゴリの記事
- 皇族への言論弾圧(2018.11.30)
- 正倉院展を訪れて(2018.11.06)
- 日本における戦後の急速な発展を支えた教育とは?(2018.09.22)
- 近づきにくい人に近づく方法(2018.09.10)
- 縄文女子と飯盛山のさざえ堂(2018.08.15)
「社会科」カテゴリの記事
- 止まらないビールの需要減(2018.12.30)
- 皇族への言論弾圧(2018.11.30)
- ありえない課題設定・・・EUが1つの国?(2018.11.24)
- 1000人当たりの暴力行為発生件数ワースト5は(2018.10.29)
- 創造性を奪うポートフォリオ評価(2018.06.05)
「ブログネタ」カテゴリの記事
- 「大人になったら教師はいなくなる」は大間違い(2017.11.27)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 「功を焦る子ども」に成長が阻害される「弱者たち」(2017.09.26)
「学力向上」カテゴリの記事
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
- 普遍性,汎用性があると誤解する「研究者」たち(2017.11.10)
- 小学校の授業を参考にする高校教師(2017.11.08)
- 最低限の教育の場の確保を!(2017.11.06)
「言語活動の充実」カテゴリの記事
- 寝た子を起こす教育(2018.05.01)
- 日本語は筆の力が物を言う(2018.04.28)
- 授業では,「わかったつもりになっている子ども」を罠にはめることも大事(2017.08.25)
- すでに「深い学び」への関心が高まっている(2017.06.24)
- 教科独自の「見方・考え方」を働かせて「深い学び」を実現させようという考え方自体が,「教科」にこだわり,タコツボ型大学教師たちの既得権益を守ろうとする,硬直的で一面的な「見方・考え方」しかできないことを示している(2016.11.09)
「教職教育」カテゴリの記事
- 「総合的な学習の時間」の指導ができるように教育できるのはだれか(2019.11.24)
- 生徒との対話の中から自然に目標達成へのルートをつくる(2018.12.26)
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
「仕事術」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
「教師の逆コンピテンシー」カテゴリの記事
- 遠慮しないで情報を提供しろ!~いじめを見逃す環境との戦い(2018.12.29)
- 偶然の重なりと緻密な演出~インスタレーションから受けた刺激(2018.12.22)
- 子どもから有能感を奪い取る方法(2018.11.25)
- 量より質が大事なものと,質より量が大事なものとは?(2018.04.23)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
「小中連携」カテゴリの記事
- 中学校化している?小学校の授業(2018.10.15)
- なぜ学習指導要領が「小学校寄り」になるのか?(2018.10.13)
- 小学校英語教育の最大の欠点(2018.08.11)
- 中1ギャップを考える前提としての小中ギャップ(2018.05.28)
- 小学校に望む本当の「働き方改革」=小学校が変われば「中1ギャップ」解消に一歩近づく(2018.01.30)
「教育実習」カテゴリの記事
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 鉄道トラブルと学校教育の劣化の共通点(2017.12.23)
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
「教員の評価」カテゴリの記事
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- ペーパーテストだけで「評価」ができる「教科」はない(2018.05.26)
- 子どもの人間関係に対する不感症の影響力(2018.03.28)
- 自分のダメさを完全に棚上げできる才能の伝授(2017.12.29)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
「教員研修」カテゴリの記事
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 鉄道トラブルと学校教育の劣化の共通点(2017.12.23)
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
「アクティブ・ラーニング」カテゴリの記事
- 現場感覚のない人が社会感覚のない人にアドバイスを送る教育の世界の不思議(2018.12.01)
- 苦しいときほど笑って「感情の錯覚」を生み出す(2018.09.15)
- 教科独自の見方・考え方の意味や意義がわかるためには(2018.09.15)
- 「知らない」ことが持っている大きなパワー(2018.09.09)
- 子どもたちに多大なストレスをかけている道徳(2018.06.02)
この記事へのコメントは終了しました。
« 尾木ママは名誉毀損の罪を犯したか?~その2 | トップページ | 中学生やその保護者が求める「教員の質」が低下する最大の理由 »
コメント