ウェイトトレーニングの是非
高校野球の世界でも,ウェイトトレーニングを導入している学校が多いようだが,
プロの世界のトップ選手には,このトレーニングに反対している人たちがいる。
その代表がイチロー。持論は「持って生まれた体のバランスを崩してはならない」というもの。
「トラとかライオンは筋トレなどしない」とも。
一方,「もっと筋トレをとりいれるべき」と主張しているのがダルビッシュ。
私もそうだったが,がっちりした体格の選手たちを間近で見た細身の高校野球の選手たちは,劣等感を感じやすい。
しかし,野球は相撲のように体格がモノを言うスポーツではない。
プロ野球選手の多くは,テレビで見るより実際の目で見た方がスリムである。
野球は瞬発力が非常に大切なスポーツなので,わかりにくい表現かもしれないが「バネ」のある肉体が求められる。
ピッチャーは特殊な「職種」で,バッターに打たれない球を投げられれば,自分は俊敏な動きができなくても試合に出られてしまう。
そういう「職種」別の事情もあるかもしれないが,イチローが言いたいのは,筋トレでは筋肉は太くなるが他の成長しない部分とのバランスが崩れ,怪我をしやすくなる,ということだろう。
手術から復帰したダルビッシュだが,田中選手と同じように「壊れやすい」「長持ちしない」体では,雇っている方は気が気でないだろう。
怪我のために試合に出られない選手を「故障者」と呼んでいるが,人間は機械と違って部品を交換すればすぐに動くものではない。手術をしたら,一定期間,仕事ができなくなる。
筋肉に負荷をかけてパワーを向上することにも,一定の限度を設けてあげるべきなのだろう。
日本人には,運動会の人間ピラミッドなど,集団で「いけるところまでいく」みたいな「限界に挑戦すること」に悦びを感じてしまう危険な精神が刻み込まれている。
スポーツ科学は,このような「危険」を知らせてくれるために存在する学問だと思うので,専門家の方たちはぜひとも成果を示してほしい。
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