A,B,Cの評価をつける能力もつける気もない教師がいると困る
観点別学習状況の評価には,三段階がある。
「十分満足」のAと「おおむね満足」のBとそれに到らないCである。
教師はできるだけ多くの児童生徒をCでなくBの状況にもっていくために指導を行う。
『学び合い』で授業を行っても,「全員,Bでいいや」ということにはならない。
「B」の子どものうち,「A」の段階に進めそうな課題を与えてあげることも「指導」の一つである。
そもそも,四観点ですべて「B」だと,評定では「3」になってしまう。
評定で「5」や「4」がつくためには,「十分満足」の観点が多いことが条件になる。
『学び合い』の授業で,教師はどのような「十分満足」な状態をつくれるのだろうか。
4人の班で,だれかがだれかに答えを教えてしまえば,みんな同じ評価になるのだろうか。
そうではないはずである。
教師のジレンマは,できるだけ妥当な評価を出すためには,それだけ学習状況がわかる活動をさせなければならない。しかし,活動が多い状況では,40人も教室にいると,一人一人の厳密な評価は出しにくいのである。
算数や英語などでは,習熟度別の少人数学習集団をつくって指導する場合があるが,
これが「上位」「中位」「下位」のそれぞれの子どもに最適な学習内容と方法を提供する手段として使われている実例である。
「みんな同じでみんながいい」では,『学び合い』と同じ発想になってしまう。
経歴を隠してブログに意見を書くのは致し方ないところもあろうが,
批判をしようとしていながら,ミイラ取りがミイラになってはいけない。
少なくとも,子どもの学力に合わせた指導を行った方が各自の実力が伸びるという場面はあり得るはずである。
部活動などでなく,自分が受け持つクラスで「個に応じた指導」の経験がない人こそが,「ぐうたら」教師なのである。
楽器の初心者と熟達者に教える技術は同一ではないはずだ。
「一斉授業」の課題がどこにあるか,ここまで説明すれば言うまでもないだろう。
もちろん,すべて「上位」「中位」「下位」ごとに学習を進めるべきだと言いたいわけではない。
社会科などでは,「下位」の子どもの方がよい発想で自由な意見を述べてくれることがある。
ただ,「下位」から抜け出せないのは,単なる思いつきを口にしているだけで,周囲を納得させられるような根拠が説明できないとか,説明がわかりやすくないとかいう課題がある生徒である。
しかし,そういう生徒に説明させないようにすると,「下位」の子どもはもちろん,「中位」の子どもまでもが伸びなくなってしまう。
「下位」の子どもはこうして他の生徒の「踏み台」になる場合もあるが,そういう経験をしながらも成長を続けていける力強い人間を学校は育成していくべきだろう。
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