校長の言葉の「重さ」と「軽さ」~「2人産め」と言われた子どもはどう思ったか?~
公立学校の校長の上司は市区町村の教育長である。
任用の権限を握っているのは都道府県教育委員会だが,学校を設置しているのは市区町村だから。
校長は,出張が多いと言われるが,市区町村で実施している定例の校長会があり,
教育長は毎月校長と顔を合わせているはずである。
教員の服務事故の報告は毎回行われるが,管理職の問題が報告されるのはまれである。
「2人産め」発言の校長は,口頭での注意にも従わなかったはずだから,適切な判断力を欠いているとみなされ,軽い処分ではすまされないと思われる。
学校現場からすると,校長の集会等での発言は,どれくらいの重みがあると考えられているだろうか。
私が接していたのは人間的に魅力のある校長ばかりだったが,やはり中には子どもと同じようなレベルで
「またどうでもいい自分の過去の話ばかりしているな」と思う人もいた。
校長とは授業等での接点がない子どもたちにとって,校長の言葉がどれだけ心に響くかはわからない。
「早く終われよ」という気持ちで聞かされている子どもも多いだろう。
他の方はどうかわからないが,多くの学校の校長先生の話というのは,生徒にとっては,
担任のきれい事のお説教に並んで,どうでもいいものの代名詞のようなものだろう。
だから「2人産め」と言われても,子どもにとっては「はあ?」ですむ。
ただ,これが教育委員会に報告されてしまうと,「はあ?」ではすまされない。
学校の隠れた教育目標に,「女子は結婚して子どもを2人以上産むものだと決意させる」なんてものがあったらたまらない。
再任用で校長職を続けているこの人物の普段の言葉に「重み」があったら,それなりの影響力もあるかもしれない。
ただ,今時の中学生には,「大人の発言のおかしいと思う点を批判する能力」を身につける教育が行われているものと信じたい。
「主権者教育」という,上から目線の「おしつけ民主主義」的な言葉があるが,まずは「大人の言動に疑問が投げかけられる子どもが育っているかどうか」を問うてみてもいいだろう。
ぜひ,該当校の子どもの声を聞いてみたい。
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