主権者教育のためにお金を使うのは是か?非か?
主権者教育の手始めに,「主権者教育」のための資料作成・配布に10億円以上の税金を使うことは是か,非かを議論させてみよう。
まずは,資料の表紙に「総務省」と「文部科学省」が並んでいることに注目させる。
「文部科学省」が作った資料を子どもが直接受け取るという仕組み自体,疑問が生まれるところだが,教育関係の省庁だから,理解できなくはない。
では,「総務省」がなぜからんでいるかというと,ここは「選挙」や「政治資金制度」を担当する省庁だからである。
18歳選挙権の開始に当たって,間もなく高校を卒業する生徒たちに,資料が配布された(はず)。
メッセージは理解できる。
「選挙に主体的に臨める主権者になってほしい」ということだろう。
20代の投票率は,30%台前半,60代は70%近い。
18歳,19歳の有権者の投票率が低いと,「制度を変えた意味がない」と批判される。
だから投票率をUPさせたい。
そのメッセージを資料にこめている。
学校関係者としてすぐに思い浮かんだ疑問は,次の3つである。
高校はこの資料を使った授業をする時間があるのだろうか。
いつ,だれが,どのような方法で活用するのだろうか。
担任か。公民科の教師か。
行政経験者として予想できる動きは次の2つである。
配布したかどうか,活用できたかどうかの調査が入る。
主権者教育を学校としてどのように進めていくか,方針をたずねられる。
20歳選挙権のときにはなかったことが,
18歳選挙権のこれからは使命として課せられる。
さて,最初の提案に戻る。
ネット上には,無料で配布できる教材がいくつかある。
それでも冊子を配布することが必要なのか。
テレビコマーシャルに10億円かけるのと,どちらがよいか,という問いはいけない。
両方ともダメだという判断ができなくなる。
いずれ,他の省庁が顔を出し始め,
投票のかわりに「地域振興券購入引き替え券」を配るなどといった「呼び込み商法」が登場しそうでこわい。
「罰則」で教師の動きを制限することではなく,
政治に関する自由な議論が学校でもできる空気づくりの方がよほど大切であろうに・・・・。
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