教師集団が子ども集団と個人としての教師や子どもを育てていく
中高で苦労する生活指導の対処法として,対象の子どもと対峙するときに,「外見的」「雰囲気的」な部分での威圧を武器にしようとする教員が,かつては大勢いた。
内面的な弱さをカバーするためにわざといでたちを派手にしたり,言葉使いを荒くしたりしている子どもに対して,このような・・・いわゆる「力で押さえる」・・・・方法は,逆効果であることは言うまでもない。
子どもの内面的な弱さを少しでも強くしてあげる手立てが教師たちに必要とされる。
内面が強い教師は,若い教師に限らず,内面的な弱さをもつすべての教師を支える役割も果たさなければならない。
もし教師が人としてのロールモデルとして子どもに対峙しようとするならば,人間としての弱さを見せつつも,芯が本当に強いことを示せる場面がほしい。
ただそのような状況設定はすぐにつくれるものではない。
こういうときに発揮すべきものが,教師集団のチームプレーであり,小学校では実行不可能な方法である。
小学校では子どもにとって担任教師と過ごす時間があまりに多すぎて,チームプレーは発揮しにくい。だからこそ学級崩壊に歯止めがかからず,いくら教頭や副校長や校長が授業に入っても,それは決して「チームプレー」ではなく「尻ぬぐい」にすぎない。
中学校や高校の場合は(これも学年に1クラスとか2クラスしかない小規模校では難しいのだが),1つの学年の中でもさまざまなキャラクターを演じることができ,役割分担が可能になる。
年齢が若いある教員は,子どもの主張を学校側に伝える「橋渡し」になり,ベテランの教員は自治的な動きの不十分さなどを指摘して,子どもに現状以上の頑張りを要求する,子どもにとっての「壁」となる。
乗り越えるべき「壁」の前にある「溝」を子どもたち自身が埋めるような行動を,また別の教員がフォローしてくれる。
教師集団がみんな同じレベルでだれに何を相談しても同じような答えしか返ってこなければ,子どもは教師に相談しようなんて気をなくしてしまう。
教師集団といっても,ベテラン教師に他の教師が絶対服従的な態度をとってしまえば,それと同じような上下関係を子ども集団でも「学習」してつくってしまう。
ぶつかるところはぶつかり,任せるところは任せる。
アドバイスすべきところはアドバイスし,見守るところは見守る。
教師集団の中でこうした人間関係が確立できると,それを見ている子ども集団も同じようなチャレンジをしやすくなっていく。
ときに上下の関係を重んじる(廊下でかわすレベルの単純な挨拶など)面を子どもに見せつつ,行事主任など経験不足な教員に任せていくところは任せていく。
人と人の関係のこうした柔軟な多層構造を,自分自身という個人の生き方自体の中に織り込んでいけるような人間にしていくことが,学校という教育に特化した社会でできることだ。
組織からいったん抜けてしまった後に,別人のようになってしまう人間を作り出さないためにも,組織は人を育てるものになっていないといけない。
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