「考える力」を問う大学入試新テストの傾向と対策
ただ記述式にしただけで,「考える力」を問う良問になるというわけではない。
全国の公立高校の入試問題をご覧になっていただきたい。
記述式問題には,単語で答えるもの,10字程度で答えるもの,2~3行で答えるものなどがある。
これらの多くは,「覚えていればできるもの」と「覚えていなくてもできるもの」に大別でき,「本当に考える力を問うていると言えるもの」はごくごくわずかである。
与えられた資料を見れば,おそらく中学校で一度も授業を受けたことがない小学生でも解けそうな問題もたくさんある。
「考える力」を問うとは言っても,答えがAパターン,Bパターン,Cパターンのいずれかが正解,という問題は出題しにくく,おそらく基本的な「正解」があって,そこと何が違っていればどれだけ減点するとか,あるいは小さいパーツごとに細かく点数をつけて重ねていく,という採点方法となるだろう。
「ふたを開けてみたら,こんなテスト,やるだけ時間と労力のムダだった」と言われないように,作問には細心の注意が払われることになるだろうが,制度設計者が最も困るのは,記述式問題の得点と,その後のマークシートの問題の得点の相関がきちんと出てしまうことだろう。2種類行う意味がなくなってしまう。
あるいは,記述式問題はさっぱりだが,マークシートの問題が非常によくできた,という受験生が出てくるのも都合が悪かろう。
「そんな学力ではダメだ」というのがテストの仕組みを変えるそもそもの理由なのだから。
さらに言えば,記述式問題がとてもよくできるのに,マークシートのできが悪い学生というのはどう評価されるのだろうか。
得点の配分にも工夫が必要になるだろう。
新テストが始まると,問題の難易度も,前年の結果を受けて,次年度以降は調整されていくに違いない。
大学は,どのような学力のタイプの学生を合格させるのか,頭を悩ませるところもでてくるだろう。
小学生の子どもをもつ親としても,中学校1年生の担任をしている教師としても,先行きは不安である。
« 原理・原則・法則にしがみつくと,すぐに思考停止に陥ることになる | トップページ | 努力の結果が報われない学校の評価システム »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「学習指導要領」カテゴリの記事
- なぜ新しい学習指導要領が失敗に終わることがわかっているか(2018.01.17)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
「教育改革」カテゴリの記事
- 改正教育基本法第16条の問題点(2018.12.28)
- 今,手を抜いていると,公教育の民営化が本格化したとき,・・・(2018.11.24)
- 国後島で考えたこと~日本の教育(2018.10.02)
- 都合の悪いことに目を向けさせなくする教育(2018.09.08)
「学習の評価」カテゴリの記事
- 創造性を奪うポートフォリオ評価(2018.06.05)
- ペーパーテストだけで「評価」ができる「教科」はない(2018.05.26)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
「ブログネタ」カテゴリの記事
- 「大人になったら教師はいなくなる」は大間違い(2017.11.27)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 「功を焦る子ども」に成長が阻害される「弱者たち」(2017.09.26)
「学力向上」カテゴリの記事
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
- 普遍性,汎用性があると誤解する「研究者」たち(2017.11.10)
- 小学校の授業を参考にする高校教師(2017.11.08)
- 最低限の教育の場の確保を!(2017.11.06)
「教職教育」カテゴリの記事
- 「総合的な学習の時間」の指導ができるように教育できるのはだれか(2019.11.24)
- 生徒との対話の中から自然に目標達成へのルートをつくる(2018.12.26)
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
「教師の逆コンピテンシー」カテゴリの記事
- 遠慮しないで情報を提供しろ!~いじめを見逃す環境との戦い(2018.12.29)
- 偶然の重なりと緻密な演出~インスタレーションから受けた刺激(2018.12.22)
- 子どもから有能感を奪い取る方法(2018.11.25)
- 量より質が大事なものと,質より量が大事なものとは?(2018.04.23)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
「教育実習」カテゴリの記事
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 鉄道トラブルと学校教育の劣化の共通点(2017.12.23)
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
「教員研修」カテゴリの記事
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 鉄道トラブルと学校教育の劣化の共通点(2017.12.23)
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
「グローバル人材」カテゴリの記事
- 孤立・自壊する可能性に気づいた?中国との関係づくり(2018.10.26)
- 大坂なおみ選手のインタビューへの非難・抗議(2018.09.14)
- マリオが総理大臣ならピカチュウを防衛大臣,ハローキティを外務大臣に(2017.12.02)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 11月20日 少子化が進む日本だが,日本には1600万人もの子どもがいる!(2017.11.20)
「アクティブ・ラーニング」カテゴリの記事
- 現場感覚のない人が社会感覚のない人にアドバイスを送る教育の世界の不思議(2018.12.01)
- 苦しいときほど笑って「感情の錯覚」を生み出す(2018.09.15)
- 教科独自の見方・考え方の意味や意義がわかるためには(2018.09.15)
- 「知らない」ことが持っている大きなパワー(2018.09.09)
- 子どもたちに多大なストレスをかけている道徳(2018.06.02)
この記事へのコメントは終了しました。
« 原理・原則・法則にしがみつくと,すぐに思考停止に陥ることになる | トップページ | 努力の結果が報われない学校の評価システム »




コメント