毎時間の授業が「書写」では,学力は向上しない
小学校に限らず,中学校の中にも,ノートをきれいに書かせることに熱意を抱いて指導している教師がいる。
中学校の場合は,ずぼらな教師も多いから,まともな板書計画もなく,
脱線した話の内容も含めて黒板上に文字があふれていったりもする。
「話を聞いていなかった人」は,黒板を見ても,何もわからない。
一方,板書計画=手もとのメモどおりにきれいに黒板に字を並べている教師の場合は,
授業中のほとんど何も聞いていなくても,最後の5分で黒板を写せてしまえば,
何かわかったような気になることができる。
たったこれだけの違いに,学力向上の鍵が隠されていることに気づけない教師はいないはずである。
会議資料をだらだらと読んでいる人間に怒りを感じたことがない教師はいないだろう。
教師は忙しいのである。
読めばわかることに,音声は必要ない。
実は,これと同じようなことを自分がしていることに気づけない教師が多いのだ。
聞く力と書く力を育てたいのなら,板書など書かないことである。
聞いたことを,自分でノートに文字にしていける力を伸ばしてあげるべきである。
板書がへたくそな教師ほど,実は学力向上の役に立っているという話である。
もちろん,この場面では板書が必要だというタイミングはある。
思考を促す道具としての板書というのがある。
これは,あらかじめ計画できない場合の方が多い。
だから,指導力のあるなしが,学力向上にはずみをつけるか,足を引っ張るかの別れ道になる。
意見がA,B,Cの3タイプ出て,両極端のA,Bと,どちらかというとAに近いCを黒板上でどう示すか。
Aは見方を変えるとCに近くなり,Bとの距離も縮まるという場合はどうするか。
自分の頭で理解できたことがらというのは,自分の言葉でノートに書くことができる。
今,学校で行われている授業の多くが,「書写」の時間になっていないかどうか。
自問すべきときである。
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