教師がその教育方針なり教育方法などに対して何かの批判を受けたときには,
「相手が批判したい本当のことは何か」を考え抜こうとする意欲を持つことが大切です。
言葉通りの表面的なことだけを直せば,批判がなくなるかというと,そうではない,という経験を積んでいる教師が近くにいたら,多くを学ぶことができるでしょう。
「批判」というのは,「氷山の一角」と考えればよいのです。
もしかしたら,直接伝えてくれた「批判」は,批判する側にとってみれば,取るに足らないことかもしれない・・・・自分にとって本当の問題とは何なのだろう,と考えるゆとりが必要です。
「あんた,子どもが好きじゃないでしょう」なんて,面と向かっては言えないものです。
「型にはめるような教え方をしないで」と言われたら,
たとえば,「型にはめてもかまわないけど,子どものやる気をなくさせないでね」と訴えているのだな,などと想像できることが大切です。実際にそうではなかったとしても。
ある人は,「他人の頭の中を見ることはできない。私は超能力者ではない」と言って,相手の心を想像することができない自分を擁護していましたが,そんな人間が小学校の担任だったとしたら,親としては恐怖です。
こういうタイプの人間に,「思っていることを正直に伝えたら,どのように逆ギレされるかわからない」と親は怖れているのです。だから,本当は苦情が大量に集まってもおかしくない教師に限って,親はおとなしい,というあってはならない現象が学校では起こるのです。校長はそこまでひどい教師がいないかどうか,よく理解しておくべきでしょう。
小中学校の場合は,教師の教育方法がどんなに工夫されたものであっても,
子どもが「こんなのやりたくない」「つまらない」「この勉強は嫌いだ」と思って,
やる気をなくしてしまうことが多いのです。
教師やコーチがどんなに理にかなったことを子どもに指摘しても,なかなか思い通りにならないのは,勉強やスポーツに限ったことではないでしょう。
「だって,それではボールが打てるようにならないから」
とって,野球のコーチが無理矢理フォームを変えさせたりするのが,よい例の一つです。
「もう,野球辞めたい」と子どもが言い出す理由の中に,
「コーチがこうしろ,ああしろ,とうるさく言ってくるから」というものがある。
コーチの側としては,「自分は熱心に指導しているのだ」と思っているし,
「感謝されることはあっても,批判される筋合いはない」と憤る人だっているでしょう。
しかし,現実問題として,子どもがやらなくなってしまったら,それで終わりです。
「型にはめるのは子どものためだ」という古い教育観では,
教師などつとまらないことを現場の人間はわかっています。
古い教育観しかもてないからこそ,現場から排除される教師もいるわけです。
アクティブ・ラーニングは,学校において,こういう古いタイプの教師の居心地が悪くなる学習です。
以前から私も指摘しているように,
質が低いアクティブ・ラーニングは,子どもたちを型にはめようとします。
型どおりやって,何の成果も得られない『学び合い』では意味はないのです。
本当によい教育というのは,大人はよい型にはめることに成功した,という実感をもちつつも,
子どもたちには「型にはめられた」という感覚がなく,あくまで自主的,主体的に取り組んだ結果,こうなった,と思わせること(だから,『学び合い』のように,他の人から教えてもらってできた,ではダメなのです)が大事。
達成感により自信を高め,自己肯定感を向上させることで,「次の学習」に生きていくのです。
「悪い癖をなくすのは時間がかかるから」という理由で,無理矢理変えさせることが,本当に子どものためになるとも限らないことを,イチローが身をもって教えてくれました。
吹奏楽で賞をとるには,短い時間で矯正を強制することが大事だ,という顧問の焦りもわからないではないですがね。
「型にはめようとしている」という指摘を受けたら,こう切り返してみたらどうでしょう。
「無理に教え込もうとしていたわけではないのですが,やる気をなくさせてしまうおそれがありましたね。申し訳ありませんでした」
「次からは,2つの方法を子どもに示して,自分がよりよいと思う方,他の人から,それっていいね,と言ってくれる方を採用してもらうようにします」
遠回りになったとしても,三者にとって,それまでとは全く違う目で,お互いを見ることができるように変わります。
「おれがやっていることが正しいんだ」・・・他人の意見に耳を貸そうとしないタイプの人は,そういう人間を周囲に増やしていきます。身勝手な人間の集団こそ,教育現場で作り出してはならないものです。
ある甲子園常連の監督が,そのことに気づくまで,10年も20年もかかった,という話は教育関係者なら知っておくべきでしょう。




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