政治が身近になったとき,最も困るのはだれか
来年の参院選で注目されるのは,公職選挙法の改正で新たに選挙権をもつようになる18歳,19歳の動きである。
高校生にとって,政治が俄然,身近に感じるものになっていると思われる。
困る人もいないではない。
公正中立の立場を職務上貫かなければならない公務員としての教師たちである。
たとえば,「集団的自衛権は合憲でしょうか,違憲でしょうか。先生のご意見は?」
と問われたときに,教師として何と答えるべきなのか。答えるべきではないのか。
元最高裁長官が「違憲だ」というコメントを出したらしい。
「憲法の番人は,憲法学者ではなく,最高裁だ」という主張をしていた政府にとって,
また都合の悪い意見が登場したわけである。
今年の17,8歳の若者は,どう思っているだろうか。
政府は,高校を卒業したばかりの若者の政治に対する考えに,それなりの興味をもっているだろう。
私の危惧は,新たに選挙権をもつ若者の考えによっては,
教育の世界に対する「圧力」が加わりかねない,というものである。
「圧力」は,うまく運べば「追い風」にもなるが,一歩間違えば「逆風」になる。
「民主主義とは何か」という問いかけを,一番やりにくい局面に政権は突入している。
これが,「国家の枠を超えての安全保障」とか,「国際平和主義」とか,「安定した国際秩序への貢献」というテーマにすれば,また風景は変わってくる。
日米の安全保障に関して「片務的」関係だとする批判も登場しているようだから,
「国際基準への移行」は政府の念願だろう。
「民主主義的な運営の大切さ」よりも,
「決定することの大切さ」を重視する政府が露わになってくると,
公立学校の教員は,たいへん授業が「やりにくい」ものになっていく。
18歳の投票率があまりにも低い場合,それはそれで教育現場の「圧力」が加わりやすくもなるだろうが,
「そんな批判をしている場合ではない大勢の人たち」との折り合いも難しい問題である。
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