「いじめられていることは,知らなかったことにしておいてください」~懲戒処分を受けるか,『いじめ』を受けた子どもの要求をきくか~
教師なら,一度くらいはこう言われたことがあるだろう。
「いじめられていることは,他の人には言わないでください」
どういう対応をすればよいのだろう。
本人からだけでなく,保護者からも同じ要請を受けることがある。
消極的な理由は,
教師や他の生徒が動けば,『いじめ』がもっとひどくなる。
積極的な理由は,
自分なりに解決していきたい,あるいは,乗り越えていきたい。
ある人は,
「何もしなければ,いじめはなくならない。」
というが,
ある人は,
「耐えていれば,過ぎ去っていく嵐のように,なくなっていく」
ともいう。
2014年には,小学校のいじめ件数が過去最高になったと報道された。
学校の『いじめ』対策は,充実に向かって動いているはずである。
それなのに,『いじめ』はなくならない。
私の経験では,『いじめ』への対応を小学校で行ったときに,
それが「よい結果」を招く確率が低かったのではないか,と思ってしまうほど,
「学校が動く」「教師が動く」ことに拒否反応を示す子どもや保護者が少なくないのである。
もちろん,積極的に動くことを要望される保護者はいるが,
このケースは,逆に『いじめ』の側に立っていたことがわかることも多い。
昔の「弱いものいじめ」と違って,今の『いじめ』は強い側もターゲットになる。
「ボスの新旧交代」「求心力のある生徒の交代」が起こるときに発生しやすい。
「過去のいじめの報復」としての『いじめ』もある。
昔からあった『いじめ』のうち,最近多いように感じるのは,
「先生にチクった」ことが原因となる『いじめ』である。
「チクり魔」という陰口を言われるのが嫌な子どもは,
教師に相談しつつも,「絶対に内緒にしておいてください」と困った要望もするのはこのためである。
大阪市では,『いじめ』には「すぐに対応する」ことを要求するような基本方針をまとめているそうであるが,
教師が「いじめの事実を隠す」のではなく,
子どもが「いじめの事実を隠す」ようになるのではないかと心配になるのは,
上のような理由による。
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