あまり知られていない成績を上げる方法
たとえば算数の学力を向上させようとする場合,
子どもの理解度に合わせて,難易度の異なる問題を解かせる必要がある。
四則演算も満足にできない子どもに,難関中学の入試問題を解くことは最初から不可能であることは言うまでもない。
逆に,難関中学の入試がスラスラ解ける子どもに,100マス計算をさせる意味はない。
子ども1人1人の学力を向上させるためには,
それぞれの学力に応じた「骨があってぎりぎり解けそうな問題」に取り組ませることが最も効果的である。
ICT機器が,このような学習に対応できる日が来るのを待ちたい。
このような学力向上策は,進学塾では何十年も前から行っている。
ただ,進学塾の場合,テストが終わった後に,簡単な解説を行うところはあっても,
その解説部分に相当の時間なり力を入れているところはあまり多くはないかもしれない。
普通の学校でもできる学力向上策は,「テスト後」の学習をできるだけ充実させることにある。
こういう指導を行っている学校が少ないことは,そもそも学力向上関係の調査でその有無を問う質問項目がないことからもわかる。
普通,学力向上関係のアンケートは,「それをやっている学校(生徒)は得点も高い」といった相関をとって,対策を立てやすくすることがねらいである。
アンケートで問われていないことを,わざわざ自ら行おうとする「創意工夫」が見られる学校はほとんどないはずである。
繰り返すが,学力向上策としてお金がかからない最良の方法は,
テスト後の学習をしっかりと行わせることにある。
すぐにでもできる方法は,テストの解き直しをさせるノートをつくらせることである。
できれば全教科,解き直しノートをつくらせたい。
子どもによっては,このノートを仕上げるために,テストの前よりも勉強しなくてはならなくなる。
長文で答える問題などが時間がなくてできなかった場合は,
このノートに自分なりに考えて書くことができる最良の答えをしたためて提出する。
教師は,その答えも真摯に受け止め,総括的な評価に生かすべきである。
同じ問題を解いて,少しでもできるようにしていくことが,受験のときの力を左右していく。
ただテストをして,ダメでした。次はがんばりましょう,では,学力は向上しない。
次とは,同じ問題をきちんと解けるようになることを指すようにしたい。
そして,実際に繰り返し解かせてみることが大事である。
特に算数・数学はこれを実践してほしい。
基礎・基本の徹底とは,こういう取り組みを行ってこそ,「やっています」と言えるのである。
全部の問題を繰り返させる必要はない。
「繰り返し」だけで学力が伸びるはずの子どもが,
「やらせっぱなし」で終わっていることが気の毒でならない。
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