止まった時計を前に進ませるためには
同じ学校に何年も居続けたり,学校外の仕事を全くしない生活が続いた教師の話を聞くと,
20年前のことを「新しい取り組み」などと勘違いしている場面に出会うことがある。
子どもと同じで孤立傾向にある教師の場合は,研究会への誘いもかからず,
校内で研究授業を任されることもなく,教育実習生の指導の立場になることもなく,
ただただ時間だけが過ぎていく。
私は,こういう「新しいモノ」に関心がない教師は,決して嫌いではない。
実直に昔のスタンスを崩さず,余計な仕事を増やすでもなく,
成功とは言えないが失敗にも見えないような実践をひたすら繰り返す人は,
どちらかというと子供も親も管理職も歓迎する傾向があるように思う。
人事では,「大きなキズがない」ことが重要な財産になるというレベルの問題がある。
しかし,こういう教師が通用しなくなる時期が訪れようとしている。
とにかく「動きの迅速さ」に最大の価値をおく人間たちが増殖することで,
過去の遺物のような教師の居場所は次第になくなっていくだろう。
止まった時計を前に進ませるために,今後,
ダムの放水のような,ほとんど洪水と似たような流れが生じる可能性がある。
教育の世界を,工場の品質管理と同じ感性でコントロールしていく発想は,
当然のことながら「教育者」のそれではない。
「事務方」に対する「教育者」の立場を維持・・・あるいは向上させていくために求められるものは何か。
それは,絶えざる自己変革に自ら進んで向かう姿勢である。
勘違いしてはならないのは,「自己変革」は単純なスキルアップで達成できるものではない。
「変革」などそう簡単にできるものではない。
しかしだからと言って,すぐにあきらめてしまうような人には教師はつとまらない。
自分の時計のねじは自分で巻く。
小さな努力の積み重ねが大事だという,子供でも知っている価値観を,教師自身が強く自覚するべきである。
« 自分の立ち位置を柔軟に変えて思考できるかどうか | トップページ | 「見える学力」という教育用語 »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「教育改革」カテゴリの記事
- 改正教育基本法第16条の問題点(2018.12.28)
- 今,手を抜いていると,公教育の民営化が本格化したとき,・・・(2018.11.24)
- 国後島で考えたこと~日本の教育(2018.10.02)
- 都合の悪いことに目を向けさせなくする教育(2018.09.08)
「教職教育」カテゴリの記事
- 「総合的な学習の時間」の指導ができるように教育できるのはだれか(2019.11.24)
- 生徒との対話の中から自然に目標達成へのルートをつくる(2018.12.26)
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
「仕事術」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
「教師の逆コンピテンシー」カテゴリの記事
- 遠慮しないで情報を提供しろ!~いじめを見逃す環境との戦い(2018.12.29)
- 偶然の重なりと緻密な演出~インスタレーションから受けた刺激(2018.12.22)
- 子どもから有能感を奪い取る方法(2018.11.25)
- 量より質が大事なものと,質より量が大事なものとは?(2018.04.23)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
「教育実習」カテゴリの記事
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 鉄道トラブルと学校教育の劣化の共通点(2017.12.23)
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
「教員の評価」カテゴリの記事
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- ペーパーテストだけで「評価」ができる「教科」はない(2018.05.26)
- 子どもの人間関係に対する不感症の影響力(2018.03.28)
- 自分のダメさを完全に棚上げできる才能の伝授(2017.12.29)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
「教員研修」カテゴリの記事
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 鉄道トラブルと学校教育の劣化の共通点(2017.12.23)
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント