教育を変える真の反知性主義とは
教育現場にも,「反知性主義」が台頭してくるかもしれない。
そのために,まずは「知性とは何か」についての共通認識が形成されることを望む。
内田樹による「知性」の仮の定義は,「知の自己刷新のこと」であるという。
自分の知的な枠組みそのものをそのつど作り替えるはたらきを,「知性」と考えている。
とすると,「反知性主義」という言葉の意味はわかりやすい。
反知性主義者たちは,無知であるよりも,むしろ知識をたくさん持っていることが多い。
しかし,なぜ「反知性」と呼ばれるのか。
それは「ことの理非の判断を他人に委ねる気がない」からである。
だから,反知性主義者による政治はおそろしいものになる,というわかりやすい理屈である。
反知性主義者は,民主主義の破壊者になるおそれがある。
教育論・教育問題のカテゴリーに参加しているブログの記事内容についてはどうだろうか。
いつもびくびく他人の目を気にしながら,
無知な人の話題を好んで取り上げている人間がいるが,
なぜこういう人間から知性が感じられないのか。
「自らの知的な枠組みが変わる」プロセスが,「お勉強」のおかげという,
何とも可愛らしい「学生風」の姿勢は憎めないのだが,
知識が増せば知性が増す,というわけではないところがおさえどころである。
さて,アメリカ生まれの「反知性主義」には,ネガティブではない意味での存在意義がある。
キリスト教を背景としたラディカルな平等意識にも支えられる「反権力」的な動きである。
こうした動きのあるアメリカに日本が従属せずにいられるためにも,
これからの教育には,「議論の場」が欠かせない。
民主主義を地でいくような活動の場が,日本の教育界には乏しかった。
ディベートをやればいい,という単純な話ではない。
議論はゲームのため,勝ち負けのために行うものではない。
剣道がなぜオリンピック競技にならないかについての簡単な説明を読んだ。
勝ち負けを競うものになってしまうことで,剣道本来の理念が失われることを危惧しての判断だという。
知性と権力との固定的な結びつきに対する反感を,単なる反感で終わらせずに,
相手に負けないだけの知性をもって堂々と対峙できる「真の反知性主義者」が日本で誕生できるかどうか。
今後,「反知性主義」は,正しい意味・意義が理解されないままで耳に残っていくキーワードの一つになっていくかもしれないが,少なくとも「批判のための批判」に陥らないように,
研ぎ澄ました目で「教育論・教育問題」を吟味したいものである。
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