アクティブ・ラーニングという「形式主義」的教育が日本人の欠点をますます助長する
欠点を補おうとする教育で,ますますその欠点が際立つようになることに,どのくらいの人が危機感を抱くことができるだろうか。
日本人にはない長所をもった人たちは,その長所を作り出したり,伸ばしたりする教育を受けているからそうなっている・・・・と考えるところまでは,半分くらいはうなずける。
しかし,日本人は,そういう教育を受けていないから,教育をがらっと変えれば,今までになかった長所を作り出せる,という信仰のもとで,教育を変えることには反対する。というより,教育現場の人が変わらないのだから,教育はそう簡単に変えられない。「道徳」→「特別の教科 道徳」になる点についても同様なことが言える。
結局は変わらないですむ・・・と楽観視できないのは,今までの内容重視の教育が劣化することで,取り返しのつかない「底辺層の広がり」「考える力の喪失」が予想できるからである。
大学の教員の変化に私は注目している。
今までは,「内容」を語れる大学教員が多かったが,
今は「方法」しか語れない大学教員が増えているように思う。
「方法」だけが研究対象である教員は仕方がないとしても,
「内容」のないところで,授業もなにもあったものではない。
アクティブ・ラーニングは,「内容」に対する確かな理解と解釈を抜きにして,教育現場に存在してはならない「道具」である。
以前に紹介した研究授業をまた引っ張り出して恐縮だが,
そこに「これからの教育の失敗」の典型を見たような気がしているので,繰り返しておく。
「学び方」はとてもよく浸透していた生徒たちであった。
しかし,「絶対にここをスルーしてはならない」と社会科教師たちが共通に感じていたある題材について,見事に教師も生徒もスルーした。
「そこをスルーしたら,社会科ではない」という教材観というか教育感が,決定的に欠落していた。
学習は,「マニュアル」「惰性」にまかせた流れを重視し,
「さっさと時間通りに進むこと」が大切である,という価値観に満たされている様子を強く感じた。
大学附属でそういう授業をしてしまう時代になったのだと,改めて痛感することになった。
子どもは,「建前」を堂々と「建前」として消化していた。
あるいは,「発言すべき内容」を感じていた生徒がいたかもしれない。
そういう生徒の「不規則発言」が封殺されてきた3年間が,「本音は隠しておくべき」という行動様式・思考形態を生んだのだろうか。
「批判的精神がない研究会には意味はない」という講師の言葉も,本音であったのかどうかが疑わしい。
そういう言葉が建前として語られるようになったら,教育は死んでしまう。
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