子どもたちの「価値」の重みを実感できるのはいつからか
教師になって,「子どもを大切にする」ことなど,いつでもだれでもできているはずだと思っていたことが,決してそうではないことを知って愕然としたのはいつだっただろう。
親として,「子どもを大切にする」ことができない人間がいることを,実感することができたのはいつのことだろう。
伝聞で知ることと,肌で知ることの違いを痛切に感じた初めての経験はいつだろう。
大切に育てられた経験の乏しい人が,自分を大切にすることはできるだろうか。
他人を大切にすることがどれだけできるだろうか。
人間の認識力は,「信頼」から「懐疑」へと重点を移していく。
その逆はあり得るのだろうか。表面的なものではなく,深い意味として。
「子どもたち」は,「子どもたち」であるからこそ,ただそれだけで「価値」をもっている。
その「価値」は大切にするも何もなく,ただそこに「ある」ものである。
そういう考え方が甘い世界に生きてきた人たちを救うのも教師の役割である。
人間としての「価値」を軽視されたり,否定されたりして生きている子どもたちを救う人間が必要である。
しかし,だれもが救える「場」にいるとは限らない・・・というより,そういう「場」に立てる人間はまれである。
何が教師の役割かは,言うまでもない。
教師として最も大切な仕事は何か。
「子どもを大切に育てる」という行為が,「価値」のあるものであると子どもに思わせることである。
相手に得をさせることで,自分も得しようとかいう話ではない。
損得で動く人間の動機は理解しやすいし,そうやって人間は動きやすい。
しかし,そうではない人間がこの世に存在していることを子どもに示せるのが教師である。
また,何も考えていない人間と戦っている姿を子どもに見せることができるのも教師である。
そういう意味で,何も考えていない教師も,役に立ってしまっている。
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