「指導力がない」というレッテル貼りをされた小学校教師のために
ある出版社の話では,小学校教育に関する本を出す場合,「個人名を出さないと売れない」ということだった。
本人が渋々承知しているのか,それとも自ら喜んで名前を出しているのかはわからないが,帯に顔写真までついている本もある。
教師という職業は,羞恥心がない方が向いている気がするのだが,いくらなんでもそれはやり過ぎだろう。
しかも現役の教師ということになると,その教え子たちは中学校に進学し,「その先生の教え子」という目で見られるわけである。
迷惑なのは,子どもの方ではないか。
さて,最近ふと,昔,初任者研修を担当したときの小学校教師のことが頭に浮かぶことがあった。
それは,同僚の先生のことを子どもの目の前で罵倒するというトンデモ教師の話を聞いたときのことだった。
初任者は,夏に宿泊研修というのを実施する。そこでは,教師になって半年もしない間に,すでに「精神的にまいっている」人が何人かいた。
グループワークをしている様子を見ると,なぜ「精神的にまいってしまうのか」がよくわかる場面に遭遇する。
それは周囲の教師からの冷たい視線である。同じ初任者なのに,「子ども扱い」されている教師がいる。
こういう光景を,私の中学校での勤務経験,研修等での集まりでも,さすがに見たことはなかった。
小学校に特有の「風習」なのだろう。
「こんなこともできないのか」
「そんなこともわからないのか」
そんな言葉を投げかけられるのが嫌で,小学校教師たちはせっせと本を購入して読むのだろうか。
気の毒な職場である。
一般社会では,そんな言葉は当たり前のように上司から投げかけられるのかもしれない。
行政の現場でもそういう面があった。
しかし,小学生の見ている前で,他の教師から罵倒される人間の姿を想像してみてもらいたい。
憔悴していた初任者にかけた私の言葉を,相手は覚えてくれているだろうか。
中学校の現場に戻って,その言葉を,再び使うことはなかった。
若い教師たちに・・・・特に,「指導力がない」というレッテルを貼られた小学校教師たちに,
中学校教師は,反撃の機会を与えてあげることができる。
子どもが,すべてを物語ってくれる。
ぜひ,教え子たちの姿を中学校に見に来てほしい。
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