佐賀・いじめ裁判で明らかにしてほしい「精一杯の対応」
一般の公立学校に限ったことではないが,生徒同士のトラブルやいじめへの対応にかかる労力は,並大抵のものではない。これは,実際に対応にかかわった教師にしかわからない苦労かもしれない。
夜中の11時すぎに電話がかかってきて,2時間以上,親の話を聞いたりするようなことも,決して「ごくまれ」なことではない。
様々な原因によるトラブルへの対応に一年中追われている中学校の教師たちにとって,訴訟への対応というのはさらに追い打ちをかけるような事態だと感じているだろう。
しかし,だからといって訴訟に踏み切った生徒を非難できる人間はいないだろう。
なぜ学校や教育委員会といじめにあっていた生徒のコミュニケーションがしっかりと図れなかったのか。
「精一杯の対応」をしてきたというが,それは何だったのか。
学校といじめをしていた生徒の関係はどうだったのか。
最も重要かつ重大な点は,いじめの実態がどうであったのか。
すべてが裁判で明らかになるだろう。
「閉ざされた空間」である学校と,「さらにそれを上回る閉ざし方」をしている教育委員会が,
どのような対応をしていたのかが,明らかになるだろう。
おそらくは,「勝者」がいない戦いになるにちがいない。
しかし,それを「不毛な戦い」にしてはならない。
いじめの対応という「簡単そうに見えて,実は単純にはいかない」教師の役割,教育委員会の役割,学校での生徒間の人間関係について,少しでも理解が深められるとよいと思う。
いじめへの対応に,「これが正解」という単純な「解」はない。
いじめの決定的な要因が,プライバシーの保護の原則のもとで公にできないため,説得力のある説明ができずに,不信感が高まるというジレンマに陥ることも多い。
「すれちがい状態」はどのようにしたら解消できるのか。
司法に解決法を見出すことはできないかもしれないが,何か良いヒントが得られるように,しっかりとした取材を新聞社の方にはお願いしたいと思う。
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