悪意に満ちた風刺表現への感性
日本の近代史の学習では,ビゴーなどの風刺絵を活用すると効果的である。
オウムだったり猿だったりする日本人が登場し,欧米の目からは完全にバカにされているわけだが,どこか愛嬌がある。
こういう風刺を笑ってすますことができる国民性は,「戦争の抑止」には欠かせないものだと思われる。
フランスやギリシャの風刺絵についてはどうか。
自国民に「ウケる」からつくって売るのだろうが,こういう風刺絵を見て,
不快になるフランス人やギリシャ人はいないのだろうか。
イスラム教徒全員を怒らせたり,ドイツ人全体を敵にまわしたりするような
「節操のない」風刺絵は,日本だったら国内で批判の対象になるだろう。
ネット上に公開されていれば,多くの人が閲覧するかもしれないが。
「悪意」があるかどうかを感じる力は,おそらくどんな国の人にもあるだろう。
それがわかった上で公開することの「メリット」とは何だろうか。
ヨーロッパの人々は,勝手に「近代化」を進め,それを「文明化」とし,
海外に進出して植民地を取り合い,勝手に「世界大戦」を二度も引き起こし,
そしてまたあからさまに「敵」をつくって攻撃している。
第三次世界大戦が起きるのも,やはりヨーロッパがらみではないか。
「歴史に学ぶ力がない人たち」と思わざるを得ない。
・・・・・という感想を中学生が抱いたとき,社会科の教師なら,
どのような反応をすべきだろうか。
アクティブ・ラーニングが日本に定着すれば,
「先生が支持する政党はどこですか。また,それはなぜですか」
という質問に直面することも出てくるだろう。
社会科の教師は,政治的な発言をどこまですることが可能なのだろうか。
まずは,「ゲートキーピング」という役割をしっかりと自覚すべきなのだろう。
感情に強く左右されそうな話題については,しっかりと冷静な判断が下せるような材料を提供するか,それがないのなら,まずはしっかり情報収集につとめるべきである。
地球温暖化に関する取り組みの委員になっている大学の先生が,実は自分自身は温暖化を信じていない,なんていう話を,教師は自ら子どもに提供する必要があるだろうか。
極端なものに,生徒は強く惹きつけられる。
論理的な説明がつく題材かどうか,教材には事前のチェックが必要である。
しかし残念ながら,今の小規模化した学校には,そのチェック機能が働くような組織は存在しない。
ばれたときに管理職が上と下から責められるだけである。
今後,学校における教職員の不祥事について,教育委員会の人間や学校の管理職の顔をメディアに露出することはやめた方がよいのではないか。
問題が起こした本人は氏名も公表されずにすむのに,管理職だけが「さらしもの」になるのはおかしい・・・・そのような印象が強くなるほど,学校というのは「組織」としてのかたちを成していないところで,それこそが最大の問題なのである。
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