英語を何のために学ぶのか
週刊東洋経済1月15日号では,とても中身の濃い特集が組まれている(『最強の英語力』)。
ここで登場している人たちは,ビジネスパーソンなら一度は聞いたことがあるエキスパートばかりなのだろう。
佐藤優の連載では「専門知識を得るには適切な著者を選ぶ」ことの重要性が述べられているから,その有力者が集まっていると考えてよい。
私が何冊か著書を読ませていただいたのが,日本通訳サービス代表の関谷英里子さんで,『えいごのもと』(NHK出版)の一部がこの雑誌で紹介されている。
英単語は,一般的にはそのつづりと,よく用いられる日本語の訳語をセットにしては覚えるものだが,「イメージ力」を身に付けることを重視している。
たとえば,cimmit という単語には,「献身する」「委託する」「決意する」「結婚する」などの訳語があるのだが,この表現のイメージを,「身を投じる」というもので理解する,ということ。
arrange なら,「整列する」「用意する」「調整する」「アレンジする」などの訳語があるが,「うまくいくように整える」と理解しておく。
そうすれば,いちいち「適切な訳語を探そうとしてまごまごする」頭の状態を取り除くことができる。
「英語は英語として理解する」とはよく言われることだが,日本人はすぐに「日本語で言うと何という単語か」にこだわるクセがある。
他の特集で紹介されているが,商談相手の方に「お座り下さい」というとき,日本人は「Please」をつければ丁寧な言い方になると単純に考えていて,「 Please sit down 」と言ってしまうのだが,これは犬に「お座り」と言っているのと同じニュアンスだったりする。当然,商談など成立しない。
だから,「どのような単語で」という発想ではなく,「どのような表現で」相手に伝えるのがベストかを考えるようにしなければならない。
それは,コミュニケーションの基本であり,「単語を並べてどうにかする」という発想ではダメなのである。
>イメージでとらえると,話の内容にとらわれず,相手の話しているフレーズのいちばん言いたい「本質」を的確に受け取れるようになる。人とのコミュニケーションで重要なのは,相手の言葉の意図を正確にくみ取り,自分の言いたいことを相手に届けること。英語のコミュニケーションではそこにイメージを介在させることが大切になる。
英語を学ぶなら,このような能力を身に付けたいものである。
お蔵入りにしてよかったと思っているが,
「自分の言いたいこと」が単なる「相手への侮辱」(「○がおかしい」のような表現で)に過ぎない人間の場合は,言葉を学ぶこと自体が他人にとっての災厄になる気がする。
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