「研究校なのに~」という教育の素人をだまらせる方法
教科や道徳,総合的な学習の時間の研究指定校になれば,中学校でも校内研究の時間を設ける必要が出てくる。
校内研修・校内研究の活性化を狙って,研究指定校になろうとする校長の判断は正しい。
問題は,このような研究が子どもにプラスとなってかえっていくことを教師たちに実感させられるかどうかだが,ただでさえ忙しく,学校内での研究・研修のチャンスをもつことができないで育った教師たちには,「果実」は想定しにくく,開始当初は文句たらたらかもしれない。開始してみれば,それなりの刺激になるはずである。
中学校の場合,放課後の部活動の指導時間を確保したいと願っている教師が多く,校内研修・校内研究はどうしても形だけのものになりやすい。しかし,職員会議とは違って,校内研修・校内研究は,その学校の教師たちがもつ「良さ」を共有するために欠かせない時間である。だから,落ち着いた学校ほど,研修・研究が充実し,教師の指導力も高まっていくという「プラスのスパイラル」効果が働く。
「時間がない」ことを理由に研修・研究をいい加減にする学校の教師たちは,「マイナスのスパイラル」に陥っていく。教育公務員特例法という法律で,教員に「絶えず研究と修養に努めなければならない」ことを求めているのは,まぎれもなく「その職責を遂行するため」である。「職責」の自覚自体があいまいになっていることも現場の課題だが,「知識を軽視し技術に走る」空気も変えていく必要がある。
研修・研究によって,より広範囲で高密度の知識をもつことは,教育の職責を全うするために欠かせない。
学校の空気や文化を変える上でも,研究指定校になるというのはよい手段である。
このような話は,実際に研究・研修で成果を残したことのない教師たちには通じにくいし,ときどき部活動が中止だといって子どもを家に早く帰らせることを嫌がる親たちなど,教育の素人の方たちには理解されにくい面もある。
要は,成果である。
教育の素人をだまらせるには,「成果」しかない。
表面的な飾りでごまかそうとするのはいけない。
その学校が,「あと数年はもつ」と実感できるような「成果」がほしい。
「研究校なんか・・・」と言う教師をなくすことが第一の求められる「成果」である。
個人研究ではなく,学校という協働の場でのすべての教員による研究の「成果」を出す経験によって,初めて「学び合い」の大切さが語れる教師になると思われる。
「研究校なのにこんな問題を出しやがって」などという部外者からのヤジは無視してよい。
「道徳の研究をすればいじめはいっさいなくなるはずだ」などという人間ほど,「教育の重さ」がわかっていない者はいない。
こういうことを言う人間は,絶対に「研究の指定を受けること」を拒否するだろう。
研究後の問題が発覚して批判されるのは嫌だと思っているからである。
教育現場から,「問題」などそう簡単になくなりはしない。
要は,正面から「問題」に向き合う姿勢がつくかどうか,ついているかどうかである。
« 語るに落ちた『学び合い』教 | トップページ | 中学校の良きリーダーは必ず現われる »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「学校選択制」カテゴリの記事
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 大規模校と小規模校の違い(2017.08.24)
- 女性社会が男性社会に変わることが中1ギャップの最大の原因か?(2017.08.13)
- 若い先生が増えると,子どもや管理職の悩みも増える(2017.08.12)
- 美味しくなってきたペットボトルのお茶(2017.08.07)
「教育改革」カテゴリの記事
- 改正教育基本法第16条の問題点(2018.12.28)
- 今,手を抜いていると,公教育の民営化が本格化したとき,・・・(2018.11.24)
- 国後島で考えたこと~日本の教育(2018.10.02)
- 都合の悪いことに目を向けさせなくする教育(2018.09.08)
「リーダーシップ」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- マリオが総理大臣ならピカチュウを防衛大臣,ハローキティを外務大臣に(2017.12.02)
- 「大人になったら教師はいなくなる」は大間違い(2017.11.27)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
「いじめ問題」カテゴリの記事
- 遠慮しないで情報を提供しろ!~いじめを見逃す環境との戦い(2018.12.29)
- 現場感覚のない人が社会感覚のない人にアドバイスを送る教育の世界の不思議(2018.12.01)
- いじめや暴力行為が多い自治体の「いじめ」対策の共通点(2018.10.31)
- いじめがない(認知されていない)学校で,いじめがある学校よりもたくさん実施されていることとは?(2018.10.30)
- データから見える「いじめ」発見の難しさ(2018.10.29)
「ブログネタ」カテゴリの記事
- 「大人になったら教師はいなくなる」は大間違い(2017.11.27)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 「功を焦る子ども」に成長が阻害される「弱者たち」(2017.09.26)
「学校評価」カテゴリの記事
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
- 最低限の教育の場の確保を!(2017.11.06)
- 「怒鳴り殺し」の生活指導(2017.10.18)
- 9月19日 食育の日と給食大量食べ残し問題(2017.09.19)
「教職教育」カテゴリの記事
- 「総合的な学習の時間」の指導ができるように教育できるのはだれか(2019.11.24)
- 生徒との対話の中から自然に目標達成へのルートをつくる(2018.12.26)
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
「仕事術」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
「教師の逆コンピテンシー」カテゴリの記事
- 遠慮しないで情報を提供しろ!~いじめを見逃す環境との戦い(2018.12.29)
- 偶然の重なりと緻密な演出~インスタレーションから受けた刺激(2018.12.22)
- 子どもから有能感を奪い取る方法(2018.11.25)
- 量より質が大事なものと,質より量が大事なものとは?(2018.04.23)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
「道徳」カテゴリの記事
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 五輪ボランティアの数字を見て(2018.12.27)
- 南青山に似た環境の公立学校は,頑張った。(2018.12.23)
- チコちゃんに叱られる~おやじギャグが言える年齢になると,ホンネも漏れやすい(2018.11.11)
- 道徳教育が成立するための条件とは(2018.10.31)
「教員の評価」カテゴリの記事
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- ペーパーテストだけで「評価」ができる「教科」はない(2018.05.26)
- 子どもの人間関係に対する不感症の影響力(2018.03.28)
- 自分のダメさを完全に棚上げできる才能の伝授(2017.12.29)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
「教員研修」カテゴリの記事
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 鉄道トラブルと学校教育の劣化の共通点(2017.12.23)
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
「生活指導」カテゴリの記事
- 南青山に似た環境の公立学校は,頑張った。(2018.12.23)
- 1000人当たりの暴力行為発生件数ワースト5は(2018.10.29)
- 「成果」を出すための「時間」(2018.10.10)
- 子どもたちにとっての「迷惑行為」とは何か(2018.09.23)
コメント