汚職と権力闘争が民主化運動の「火付け役」になるか?
某国では「反腐敗」をテーマに掲げた権力基盤強化の動きが進んでいるようだが,
その国のメディアが汚職に関するニュースを「体内の病原体は除去しなければならない」という趣旨のたとえを使って報道していることを知った。
このたとえは,日本が明治期に近代国家を形成しようとするとき,国家を人体にたとえて,国民一人一人が細胞のような働きをするという「国家有機体説」に則ったような説明に似ている。
明治期には衛生概念を教えることにも使われ,日本人の「公共」の観念は,衛生概念の習得とともに養われていったという考え方もあるらしい。
国家を人体にたとえるタイプの「国家有機体説」は,ヨーロッパでは前近代的なものだが,明治時代の人々にはしっくりくるものだったらしい。
日本語には,「一体化」「身につける」「体で覚える」といった表現があり,心(精神)と体を分離させたヨーロッパ風の人間観から見れば,やや時代錯誤的な捉え方が今でも息づいている。
(なお,私自身は心と体を「一体」として捉える日本的な捉え方も,真理を反映しているという見解である)
こうしたヨーロッパでの前近代的な「国家有機体説」で現在の某国を表現すれば,頭部は党の最高指導部ということになろう。
そして,「癌は取り除かなければ人体を滅ぼす」という観念がそっくりそのまま国家に適用されることになる。
犯罪者が法に基づいて処分を受けることは当然だが,こういうたとえは,「異物の処理」という形で人権が侵害される側面もあるから,注意しなければならない。
日本が台湾や朝鮮を植民地にしたときの「国民化政策」にも,日本風の国家有機体説的理解が影響していたと考えることができる。
さて,某国の今後の動きであるが,明治期の日本の国家有機体説が,「自由民権運動」や「大正デモクラシー」などのかたちで国民の権利意識を高める素地をもっていたとしたら,某国の国民の国家像にも影響を与え,民主化を求める動きの「きっかけ」になる可能性を持つと考えることもできよう。
汚職をめぐる報道上の表現の一つが,国家を大きく揺るがすことになる,
というのはあり得ないことではないと私は思う。
内部の権力闘争以上に恐るべきことが何か,某国政府は十分にわかっているだろうが・・・。
« 「学び合い」が信頼していない人間 | トップページ | 驚きのデータ・・・97分,38億円 »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「ニュースより」カテゴリの記事
- 止まらないビールの需要減(2018.12.30)
- 五輪ボランティアの数字を見て(2018.12.27)
- 南青山に似た環境の公立学校は,頑張った。(2018.12.23)
- 愛校心によって大切なものを失った経験から(2018.12.16)
「リーダーシップ」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- マリオが総理大臣ならピカチュウを防衛大臣,ハローキティを外務大臣に(2017.12.02)
- 「大人になったら教師はいなくなる」は大間違い(2017.11.27)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
「歴史学習」カテゴリの記事
- 皇族への言論弾圧(2018.11.30)
- 正倉院展を訪れて(2018.11.06)
- 日本における戦後の急速な発展を支えた教育とは?(2018.09.22)
- 近づきにくい人に近づく方法(2018.09.10)
- 縄文女子と飯盛山のさざえ堂(2018.08.15)
「社会科」カテゴリの記事
- 止まらないビールの需要減(2018.12.30)
- 皇族への言論弾圧(2018.11.30)
- ありえない課題設定・・・EUが1つの国?(2018.11.24)
- 1000人当たりの暴力行為発生件数ワースト5は(2018.10.29)
- 創造性を奪うポートフォリオ評価(2018.06.05)
「教員研修」カテゴリの記事
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 鉄道トラブルと学校教育の劣化の共通点(2017.12.23)
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
「グローバル人材」カテゴリの記事
- 孤立・自壊する可能性に気づいた?中国との関係づくり(2018.10.26)
- 大坂なおみ選手のインタビューへの非難・抗議(2018.09.14)
- マリオが総理大臣ならピカチュウを防衛大臣,ハローキティを外務大臣に(2017.12.02)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 11月20日 少子化が進む日本だが,日本には1600万人もの子どもがいる!(2017.11.20)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント