効率を優先すると必ず失われるものがある
『どんな事務仕事でも「雑務」と呼ばない人を教員に』という記事の続編である。
現在,通知表をパソコンで打ち出している学校はどのくらいになっただろうか。
昔は,1~5やA~Cの評定・評価をはんこで押していたものである。
そして,何人かの目で,原簿と照合し,誤りがないように確認したものである。
「こういう事務仕事は雑務だ」「子どもと接する時間を減らす」「教材研究にさく時間を増やすべきだ」などという声のもとで,その「照合作業」すら怠るようになってきた。
だからどこかの市のように,通知表の内容を事前に通知するようになった。
これこそが「雑務」である。
かつては,1つ1つのはんこを押しながら,
「ああ,この生徒は美術が1つ上がったんだ」とか,
「あれ,本当にこの生徒の数学の評定は3なのかな」などと,生徒一人一人の顔を思い浮かべながら,また,通知表を手渡すときに,どのようなやりとりをするかを考えながら,作業をしたものである。
学級担任が,教科担任のつけた評価の誤りに気づき,保護者の手に渡る前に修正できたこともあった。
私のコンピュータ活用歴は,「桐」に始まる。
ソフトとの出会いは「桐」である。若い方は,何のソフトかご存じない方も多いだろう。
成績や進路情報の処理のために,「一太郎」や表計算ソフトよりも早くに習得させられてしまったのである。
コンピュータを使って,進路情報に関する受験する学校別一覧表,クラス別一覧表,男女別,成績別一覧表,進学先一覧表,合否一覧表などを即座に打ち出して,担任の先生方に渡すことができる。
今ではアクセスを使うまでもなく,エクセルで十分に作業ができる。
こういうことができる私が,「通知表は手書きがよい」と主張していることの意味をしってほしい。
他のクラスの通知表を打ち出す作業をしたくないとは言っていない。
そんなことは,ほんのわずかな操作で可能なのである。
効率を優先すると,必ずたいせつな何かが失われる。
そう,あなたの職が失われる日が来るかもしれないのである。
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