「学ぶ=講義を聴く」の発想からの離陸
講義を聴く,というスタイルの学習は,予備校でもはやっている。
優れた講師の講義を録画して,それを見ながら勉強させるビジネスが,生の講義で受講させるより「利益率」が高いことは言うまでもない。あとは,「学力向上効果」の問題である。
「学び方を学ぶ」教育を受けてない人は,
放送大学の放送を見ることで「自ら学んだ」気分になっているようだが,
20年前にできた「新しい学力観」から見れば,「時代遅れ」も甚だしい。
身にはならない難しい話を「学問」だと思っている人がいるうちは,大学の淘汰も進まないだろう。
「不特定多数に向けての講義を受けること」が「学習」で,これがとてもためになる,という発想が人々の間にあるうちは,公立小中学校の教育も変わっていかない。
大学は今頃になって「インタラクティブ・ティーチング」などという名称で授業を工夫するようになったが,真面目な公立学校の現場は変わったのは今から20年も前の話である。
もちろん,自治体によってはそのような動きが極端に遅いところもある。
大阪では目標に準拠した評価=絶対評価が成立しなかったというのも,最近の話である。
信頼性のない絶対評価より,相対評価の方が入試の材料としては最適である,あるいは,もう入試は試験だけで決めるのが公平である,というのは非常に多くの人が本音として抱いている。
人は,どのような学び方をしたかで,その後の「学びの姿勢」が決まってしまうのだろうか。
知識の習得の方法として最適なのは読書である。話し言葉や原稿の棒読みを聴くよりも,はるかに時間的な効率も良いし,「別の内容を調べにいく」という学びの可変性,可塑性にも優れている。
しかし,本当の学力は,読書では身につかない。
教え子たちが試しに受けてみた模擬テスト(業者テスト)について,こんな感想をもらしていた。
「これでは学力はつかないし,学力は測れない」
採点が容易なテスト・・・暗記だけで解けてしまうようなテストを「まとめの意味のテスト」として実施することを禁止する法令をつくれば,学力は向上するかもしれない。
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