あなたが先生を自分で選べるなら,「優秀な非常勤講師」と能力未知数の「新規採用教員」のどちらを選びますか?
私は多くの優秀な非常勤講師に出会ってきた。
大学院生だったこともあるし,別の仕事もこなしながら,週2回程度,学校現場に来てくれる人もいる。
公立学校の場合,ALTは非常勤講師である。
優秀な講師たちは,「私の学校に来てほしい」と願う校長が多い。
しかし,どこでどのような優秀な人材が活躍しているか,情報網がしっかりしていないとわからない。
優秀な講師は他校にとられたくないから,わざわざ他の校長に宣伝してくれる人も少ない。
特定のコネがないと,優秀な講師を確保することは難しいのである。
ドラフト会議を想像してもらったらわかりやすいだろうか。
非常勤講師の場合,先着順だから,「優秀な人から順番に決まっていく」仕組みはよくおわかりになるだろう。
ここが英会話学校だと仮定しよう。
大学を出たての,新規採用の人間が,2か月ほどで仕事に自信がなくなり,この穴を埋めるために,非常勤を雇うことになった。この非常勤はすでに退職したベテランで,難無く残りの10か月をこなしてくれた。
こういうことは学校現場でも起こっている。
教師としての力量が未知数の人間と,実践歴が長く,指導に定評のある講師と,どちらの方を管理職は「信頼」できるか。
教師というのは,本来,長い目で「信頼」をしてあげることで成長していく。
ただし,これを子どもや親の側の目線で見ると,非常に不安になることは想像できることだろう。
私の授業を受けた子どもたちを比べてみて,それは今の子どもの方が,新採のころの子どもたちよりも幸運だろう。
大量採用の時代の教員の大量退職が続く時期が訪れる。
また大量の新規採用をしなければならない。
今や,校長を退職した後,安い給料で再び雇用され,校長職に戻る人が増える時代となった。
同じように,退職者のうち,学校の信頼のあつい人は,様々なかたちで学校にかかわり続ける時代になるだろう。
そうでないと,公立学校は存続することが難しいと言われるほど,人材の確保は最重要の課題になっている。
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