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小中の社会科で子どもが大切にしていること

 中学校2年生を対象にして行ったアンケート調査の結果をご紹介したい。

 これは,「小学校6年生のときの社会科の学習で,あなたが最も大切にしていることは何でしたか」

 「中学校2年生の(現在の)社会科の学習で,あなたが最も大切にしていることは何ですか」

 を問うたもので,選択肢は,やや多いが

 1 楽しむ

 2 覚える

 3 考える

 4 調べる

 5 理解する

 6 つくる

 7 話し合う

 8 発表する

 9 まとめる

 10 地図を使う

 の10個である。

 グラフは,中学校の定期考査の成績別に比較できるようにしてみた。

 成績は上位から下位まで1:1:1の比になるように分けている。

6g

8g

 一目でわかることだが,小学校6年生の社会科の学習で最も子どもが大切にしていたのは「覚える」ことであると答えた生徒が,成績にかかわらず最も多い。

 成績下位者だけの特徴は,「楽しむ」ことを最も大切にしている子どもが多いことと,「理解する」ことが最も大切だと答えた子どもがいないことである。

 成績上位者の中には,「まとめる」ことだと答えた子どもが多かった。

 中学校2年生の結果を見てみると,「覚える」ことだと答える生徒がどの成績ランクでも減るが,下位にいくほどその数は多くなる(割合が同じなので数も同じように多いことを示す)。

 成績にかかわらずに多い回答として,「考える」こと,「理解する」ことが表われる。「考える」ことだと答えた生徒は,下位の生徒がやや少ない。

 なぜ「考える」ことや「理解する」ことが大切だと答える生徒が多かったかと言えば,授業もスタイルや定期考査の問題が,「考えた結果」を書かせたり,ただ覚えているだけではだめで,よく理解していないと答えられないものが多いことも影響しているだろう。

 興味深いのは,「楽しむ」ことと答えた生徒が,中学校では成績上位者に最も多くいたことである。

 このアンケートから,子どもが社会科の授業で大切にしていること(していた)ことがわかる。

 なぜ「楽しむ」という,他の選択肢とはやや異質のものを入れたかというと,小学校の教師がよく「社会科は楽しむことが大切だ」と言うからである。では,実際にはどうだったか。

 
 小学生の社会科は,「覚えること」を子どもに要求しているのだ,という指摘を,学会発表の質疑の場でしてくださった先生がいた。まさにその通りだろう。

 中学校の社会科のレベルになると,「覚えること」で対応できることは少なくなる。

 質の低い入試問題や指導力の低い教師がつくるテスト問題は「覚えること」で対応できるが,

 現在,観点別学習状況の評価を適正に行うことが求められているから,

 定期考査の問題においても,

 「関心・意欲」の程度がわかる問題,

 「思考・判断」の力量を「表現」された文章等で確かめる問題,

 「資料活用の技能」がわかるように様々な資料を使う問題,

 確かな「知識・理解」が定着していることが判断できる問題

 を現場の教師は作成し,出題しているはずである。

 時代は変わっている。

 変化の激しい時代を生き抜く子どもを育てるために,

 教師が果たすべき役割もますますその重要性を増している。

 小学校教師でも,あの薄っぺらな社会科教科書で満足している人は少ないだろう。

 アメリカの小学校で使われている歴史教科書の対訳本が出版されている。

 長い歴史をもつ日本の小学校の歴史学習の教科書は,

 果たしてあれでよいのか。

 「調べる学習」を主とした小学校の歴史学習なのだから,

 「調べられる教科書」が生まれなくてよいのか。

 それをはばむ最大の問題が,小学校教師の多くがもつ「学力観」である。

 上のアンケート結果を見て,ぜひその「学力観」を再考してほしい。

 小学生は,多くの知識を習得することを,中学生よりも「大切」に思っているのかもしれないのである。

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    「楽毅」第四巻より
  • みごとなものだ。斂(おさ)めるところは斂め、棄てるところは棄てている。楽氏が棄てたところに、われわれの生きる道がある。
    「楽毅」第四巻より
  • 去ってゆく千里の馬を追っても、とても追いつかぬぞ。千里の馬の尾をつかむには、その脚が停まったときしかない
    「楽毅」第四巻より
  • ・・・つくづく人のふしぎさを感じた。道を歩く者は、足もとの石をたしかめようとしないということである。千里のかなたを照らす宝石がころがっていても、気がつかない。それほどの名宝は深山幽谷に踏みこまなければ得られないとおもいこんでいる。
    「楽毅」第三巻より
  • この城をもっとたやすく落とすべきであった。たやすく得たものは、たやすく手放せる。
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    「楽毅」第二巻より
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