「今」は「過去」と「未来」によって成り立つ
タイトルは,
中島岳志・若松英輔著『現代の超克 本当の「読み」を取り戻す』(ミシマ社)
に紹介されている言葉です。
ヒンディー語では,「昨日」という単語と,
「明日」という単語が同じだそうですね。
「おととい」と「あさって」も同じ単語。
つまり,「今」からの距離が等しいという
意味で,過去と未来は「同じ」だという感覚。
両者の違いは,
動詞が過去形か未来形かで判断するとのこと。
歴史とつながらないと,
未来の他者ともつながれない・・・・・
このような「今」の感覚をもてるようにするのは,
どうしたらよいのでしょうか。
「死者のデモクラシー」の話も大切です。
自分一人の,そのときの考えだけで投票してはならない。
自分の投票のなかには,死者が含まれていなければならない。
死者と語らうこと,歴史を引き受けようとする態度が,
未来の他者とつながることにつながる。
歴史を語っている者は,死者を感じながら語っているということ。
『苦海浄土 わが水俣病』を著わした石牟礼道子さんの
講演が終わった後,事務局代表の方が,こんな挨拶を
されたとのことです。
>後日同じ会場で水俣展をやる。(中略)
その会場では,水俣で亡くなった人たちの遺影を飾る,
みなさん,ぜひその方々に会いに来てほしいと言うのです。
彼は本気で言っている。みなさんの来場を死者たちが
待っている,どうか来ていただきたいと言う。
彼は,みなさんがそこで写真を見るということは,
本当に世の中をつくっていくことそのものなのだ,
と言うのです。(中略)
実際にそこに行けば,行く前には考えも及ばないような
出来事が内心で起こる。そうした経験だけが世の中を
変えていくというのです。
言葉にはされていないようですが,
こういう経験と,
「読む」ことがいかに「近い」ものであるか,
実感することができました。
歴史教育に必要なものが何だか,
なぜ私が歴史教育にかかわって
いるのか,
少しわかったような気がします。
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