何も語られていないのと同じ教育論
現場経験のない大学教師の教育論が,とても空疎で何の役にも立たないように
聞こえてしまうのと同じように,現場教師が語る教育論も,世間の常識と
かけはなれていて,全く言いたいことが伝わってこない,という批判を覚悟しなければ
ならないのが教育の世界の話なのかもしれません。
自分がどういう人間かを伝えたいことは伝わってきても,
教育については実は何も語っていないことに
自分自身が全く気づいていないと思われる人の文章によく接することが
できるのが,こういう教育ブログの世界です。
塾や部活動の世界というのは,そもそも
「勉強したい人」「運動がしたい人」が集まるところです。
そういう世界では,実は「教える人」がいなくても,子どもだけで活動が成立することもあります。
それが学校の授業ということになると,180度変わった風景になることは
容易に想像がつくことでしょう。
すべての子どもがその時間,その場所に縛られて,「勉強しなければならない」場が
教育現場というところなのです。
午後3時すぎのことばかり書きたがるような人に,
教師にとってためになる教育論など,とうてい語れません。
音楽の授業を受けるなんて時間の無駄だと感じている生徒は,
どのような態度をとるでしょうか。
寝ていてくれれば他の生徒に害はないのですが,
自分たちが好きな歌を歌っていたり,教室の前に出て急に
ピアノをたたき出したり。妨害のし放題になるのが荒れた学校です。
そういう行動に対して教師が有効な対処ができない状態を,
「授業崩壊」といいます。
荒れた学校の体育の時間は,まさに「自由時間」のように
生徒がスポーツというか,遊びに興じていられたようです。
音楽や体育のような「実技教科」の特徴は,
「授業崩壊」している方がよほど子どもが生き生き,伸び伸びしていて,
やりがいに満ちている姿が見られる時間となりうるということです。
危険な行動を抑止したり,事故が起こったときの適切な対処ができさえすれば,
国語や算数の指導力がない教師にも任せられてしまう場所でもあるのです。
どうしたら,荒れた学校の実技教科が正常な状態で実施できるのか。
それは,荒れた学校を部活動ではなく,授業など日常の生活で立て直せた
学校の教師にしか語ることができません。
私の持論は,「荒れた学校」を生む要因の一つが音楽と体育の教師にある,
というものです。あくまでも持論ですが。よい学校が荒れていく過程で,
授業は,この2つの教科から荒れていくことが多いはずです。
普通教室の中で起こらない荒れは,学校全体からは見えにくいものです。
しかし,この2つが荒れれば,確実に他の教科の授業の状態にも波及していきます。
なぜなら,「心」と「体」「身体運用」の乱れがミックスされると,中学生というのは
とことん「荒れ」始めるからです。
音楽や体育の教師が生徒と「心の対話」ができないとき,
授業は死にます。生徒にも教師の「人と対話できない心」が浸透していきます。
ですから,荒れた学校を立て直すには,音楽と体育で優秀な教師を異動させるのが
第一条件になります。
音楽を通して「心」を育てることに成功しているかどうか,合唱発表会などが公開
されていれば,すぐにわかってしまいます。
教師が出過ぎていないか,競争させてしまっていないかが重要な観点ですが,
生徒の顔を見るだけでわかります。
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