「すべての子どものため」=「特定の子どものため」
「すべての子どものため」という理想を教育で実現しようとしたら,
「特定の子どものため」の支援が必ず必要になる。
それを,子どもたちに丸投げしてしまうのが極端な「学び合い」である。
「学び合い」の場面としてとても有効的なものは,学級の自治会とか,
行事の運営にかかわる面とか,特別活動や道徳にかかわるテーマが
望ましい。
教科の指導では,極端な「学び合い」は不向きである。
小学校では,教科で指導すべき内容が「すかすか」で時間に余裕が
あるため,ある程度の「学び合い」は許容される。
しかし,中等教育の世界に入ってまで教科で「学び合い」に重点を
おけば,大失敗が待っている。
大失敗が大失敗で終わらないように見えるのは,ただただ
教師の指導力が乏しいからにほかならない。
教師が教えても,生徒が教え合っても同じだというのなら,
教師は必要ない。
ICT機器の活用にしろ新しいカリキュラムの導入にしろ,
もし「すべての子どものため」という理念を掲げたいのであれば,
それは「できない子どもをできないままにしておかない」という
当たり前の指導が必要となる。
授業力の向上には,まずは個人指導から入っていくという研修方法も
考えられるのではないだろうか。
目の前の一人の子どもに「理解させることができない」学生には,
教師になる資格はないだろう。
ICTを活用すれば,どれくらい子どもの理解を助けることができるのか,
そのような観点で研究をしていた教師で,ある一定の成果が得られた人なら,
たった一人しかその対象となる子どもがいなくても,
授業で機器を活用する努力をすべきである。
「すべての子どもを」とうわごとのようにつぶやいている教師の中には,
「すべての子どもが使えないとだめ」という妄執がとりついている場合がある。
「すべての子どもを」という用語を使っている人間は要注意である。
「一人一人の子どもを」という発想で教育は語りたい。
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