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「わかりやすい理由にとびつく」というわかりやすい誤り方

 小学校の教師の中で,「ゲーム脳」などという言葉を使って子どもを脅している人はどのくらいいるだろうか。

 専門家かどうか,怪しい人の話を広めている怪しい一般人が多い。

 専門家の話を広める怪しい人もいる。

 「怪しげな話」かどうかの判断がつかない人の特徴は何だろう。

 ある大学での実験の様子を目にしたことがある。

 人間の脳は,

 簡単な計算と,複雑な計算をしているとき,

 どちらの方が脳全体が活動していると考えられるだろうか。

 実験結果では,簡単な計算をしているときの方が,

 活性度が高いという。

 こういう話に,すぐにとびつく人たちがいる。

 実験することを仕事にしている大学の人たちなら問題ないのだが,

 子どもを実験台にしてしまっている小学校の現場教師たちがいる。

 脳全体が活性化した方が,いいに決まっている・・・・・

 本当に脳の仕組みを知りたい人の言葉とは思えないのだが,

 そう信じてしまう人は少なくない。

 「子どもは飽きやすい」「子どもは長時間,集中できない」

 という信念をもとに,1つのテーマで45分を使わない教師もいる。

 かつてここで紹介したことがあったが,細切れの活動が大好きな

 ある小学校教師の指導案を見たときに,授業前,私がこう尋ねたのをはっきりと覚えている。

 「もしこの段階で,生徒の議論が活発になっていたとき,どうしますか?」

 返答は忘れてしまったが,授業は指導案通りに行われたことと,

 「どうしてあの場面で議論を打ち切ったのか」と非難したことは覚えている。

 若い教師だったので,「どこかのだれかのモノマネかな」と思っていたが,

 やがて,「教祖」が判明した。その教師の教え子たちが中学校で暴れるというので正体がわかったのである。

 こういう「思い込み」だけで授業をしている教師たちを減らさなければならないと思い,

 機会があるたびに問題を事例を紹介してきたが,

 宗教の域に達してしまっている人たちの耳には届かないようである。

 中1プロブレムの原因だなどと指摘すると,

 「中学校でも導入しろ」なんて言い出しかねないから,おそろしい。

 さて,流動性知能というのは,ある年齢に達すると衰えることがわかっている。

 これは,迷路のパズルを2分間で何問解けるか,という単純なテストでわかる。

 しかし,人間はこのタイプの知能だけで生きているわけではない。

 年齢や経験,学習とともに向上を続ける結晶性知能を人間はもっている。

 流動性知能の衰えを,結晶性知能で補うことによって,年齢が上の人間たちもそれなりに優れた行動がとれるという仕組みである。

 問題は,不測の事態に対応する能力のように,単純な記憶量や経験だけで向上するとは限らない知能の解明が進んでいないことである。

 わかりやすい理論にすぐにとびつき,真似をするクセのあるタイプは,

 きっと強迫観念的に「わかりやすいことがいいことだ」と信じ込んでいる人間に多いはずだ。

 パズルを速く解けることが,人間にとってどれだけ価値があることかは考えない。

 とにかく目の前の人間が,必死に与えれた課題に取り組む姿勢だけがほしい人間には,

 百マス計算などはぴったりの命令である。

 それに何の迷いもなく必死に取り組む小学生は,本当にいじらしい。

 というか,気の毒である。

 「脳の活性化」という言葉は,たとえば家族が痴呆で悩んでいる人に,治療の成果を期待させるという手段で使うのはいいと思うが,安易に子どもの教育の場面で使うべきではないと私は考えている。

 なぜ人はだまされてしまうか。

 人を信じるいい人だ,という話とは全く別の次元の問題があることに気付いてほしい。

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  • 雲のうえに頂をもつ高山を登ろうとするのに、その山相のすさまじさに圧倒され、おじけづいていては何もはじまらない。最初の一歩を踏み出さねば、山頂は近づいてこない。
    「楽毅」第四巻より
  • みごとなものだ。斂(おさ)めるところは斂め、棄てるところは棄てている。楽氏が棄てたところに、われわれの生きる道がある。
    「楽毅」第四巻より
  • 去ってゆく千里の馬を追っても、とても追いつかぬぞ。千里の馬の尾をつかむには、その脚が停まったときしかない
    「楽毅」第四巻より
  • ・・・つくづく人のふしぎさを感じた。道を歩く者は、足もとの石をたしかめようとしないということである。千里のかなたを照らす宝石がころがっていても、気がつかない。それほどの名宝は深山幽谷に踏みこまなければ得られないとおもいこんでいる。
    「楽毅」第三巻より
  • この城をもっとたやすく落とすべきであった。たやすく得たものは、たやすく手放せる。
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    「楽毅」第二巻より
  • からだで、皮膚で、感じるところに自身をおくことをせず、頭で判断したことに自身を縛りつけておくのは、賢明ではなく、むしろ怠慢なのではないか
    「楽毅」第二巻より
  • こうする、ああする、といちいち目的と行動とを配下におしえつづけてゆけば、配下はただ命令を待つだけで、思考をしなくなる。この四人はいつなんどき多数の兵を指揮することになるかもしれず、そのときにそなえて自立した思考力をもつ必要がある。
    「楽毅」第二巻より
  • 人は自分の存在を最小にすることによって最大を得ることができる
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  • 勇と智とをあわせもっている者は、攻めるときよりも退くときに、なにかをなすときより、なにもなさないときに、その良質をあらわす
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