教員の夏期休業中の勤務について
教員が「公務員」として適格か失格かがわかりやすい指標がある。
「教育者」には,塾の先生でもなれる。親にもなれる。
しかし,「公務員」としての先生には,守るべきものがある。
その自覚があるかないかが,「夏休み」観でわかる。
子ども向けの「夏休みの生活記録」を,教員向けにも実施した方がよいかもしれない,という実態もある。
20年から30年以上前は,夏期休業中の勤務の管理はよほどいい加減だったのだろう。
あるいは,現在でも「管理職不在」の自治体では,同じような事態が続いているのかも知れない。
国民の「不満」だけではなく,そのために様々な事件や事故が起こってきたのだから,
法令に基づいて管理を徹底するよう,教育委員会がカリカリするのは当然のことである。
教員は普段は忙しいから,
長期休業中に,その分の鋭気を養う,という面は当然あるのだが,
「自宅で研修」などが安易に認められるべきではないことは,だれが考えてもわかる。
「自由な研究の時間」は,当然,認められるべきである。
しかし,学校以外でそれを行いたいなら,学校内ではできないという根拠が必要である。
「自由」には「義務」や「責任」が伴うべきであるという,
道徳教育の内容以前の課題意識が希薄な人間が,教員の中に紛れ込んでいるのは事実だろう。
小学校の教師の場合は,学校に子どもが来る期間が限られているから,
そういう過ごし方が不可能なわけではないが,
普段が忙しいからこそ,
この期間にしかできない仕事も山のようにある。
中学校の教師の場合は,部活動の指導があるから,「休暇」を消化しきれないほど,
学校に勤務することになる。
ただ中学校に出てきて,パソコンを前に仕事をしているふりをしていた経験のある人間もいるだろう。
厳密な意味からすれば,これは職務専念義務を果たしていないと言えるが,
そこまで厳しく管理することはできない。
勤務時間中にパチンコをしていて,駐車していた自家用車から生徒の成績データが入ったメモリを
盗まれる,という事件があったが,こういうことが起こらないようにするためには,
何もしていなくても中学校にいさせるべきという話になってしまう。
問題行動を起こさせるより,部活動で締め上げている方がましだ,という論理と同じである。
「もっと教師に自由を」と偉そうなことを言う前に,
まずは自分が「公務員」であること,
国民の税金で食べさせてもらっている人間であることを自覚すべきである。
道徳を特別の教科にする理由は,教師をもっとまともな人間に育てるためだ,
という考え方があることに,抵抗できない現状を何とかしてほしい。
« 来年2月の東京都立高校入試の一部にマークシート方式導入へ | トップページ | 試験の採点場面でわかる教師の「教育への誠意と熱意」 »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「ニュースより」カテゴリの記事
- 止まらないビールの需要減(2018.12.30)
- 五輪ボランティアの数字を見て(2018.12.27)
- 南青山に似た環境の公立学校は,頑張った。(2018.12.23)
- 愛校心によって大切なものを失った経験から(2018.12.16)
「ブログネタ」カテゴリの記事
- 「大人になったら教師はいなくなる」は大間違い(2017.11.27)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 「功を焦る子ども」に成長が阻害される「弱者たち」(2017.09.26)
「学校評価」カテゴリの記事
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
- 最低限の教育の場の確保を!(2017.11.06)
- 「怒鳴り殺し」の生活指導(2017.10.18)
- 9月19日 食育の日と給食大量食べ残し問題(2017.09.19)
「教職教育」カテゴリの記事
- 「総合的な学習の時間」の指導ができるように教育できるのはだれか(2019.11.24)
- 生徒との対話の中から自然に目標達成へのルートをつくる(2018.12.26)
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
「仕事術」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
「教師の逆コンピテンシー」カテゴリの記事
- 遠慮しないで情報を提供しろ!~いじめを見逃す環境との戦い(2018.12.29)
- 偶然の重なりと緻密な演出~インスタレーションから受けた刺激(2018.12.22)
- 子どもから有能感を奪い取る方法(2018.11.25)
- 量より質が大事なものと,質より量が大事なものとは?(2018.04.23)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
「道徳」カテゴリの記事
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 五輪ボランティアの数字を見て(2018.12.27)
- 南青山に似た環境の公立学校は,頑張った。(2018.12.23)
- チコちゃんに叱られる~おやじギャグが言える年齢になると,ホンネも漏れやすい(2018.11.11)
- 道徳教育が成立するための条件とは(2018.10.31)
「教育実習」カテゴリの記事
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 鉄道トラブルと学校教育の劣化の共通点(2017.12.23)
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
「教員の評価」カテゴリの記事
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- ペーパーテストだけで「評価」ができる「教科」はない(2018.05.26)
- 子どもの人間関係に対する不感症の影響力(2018.03.28)
- 自分のダメさを完全に棚上げできる才能の伝授(2017.12.29)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
「教員研修」カテゴリの記事
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 鉄道トラブルと学校教育の劣化の共通点(2017.12.23)
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
この記事へのコメントは終了しました。
« 来年2月の東京都立高校入試の一部にマークシート方式導入へ | トップページ | 試験の採点場面でわかる教師の「教育への誠意と熱意」 »
コメント