教師にとって必要なのは「不安感」
人間には,無意識的に自らの不安を取り除く機能があるらしく,
緊張するはずの教育実習生でも,とてもしっかりした指導案をつくり,
最初の授業を落ち着いて「こなす」ことができる学生がいます。
自分の教え子が実習生として母校に帰ってくる頻度が高くなってきました。
こういう実習生たちに私が使うのは,「攪乱戦法」です。
指導案には,もっと「不安要素」がなければならない。
授業には,さらにそれを上回るような「何かが足りない感触」がなければならないのです。
「あなたが本当に教えたいことは何ですか?」
と繰り返し問ううちに,普通の実習生は次第に混乱してきます。
そして,自分が自然に自分を納得させてきたこと,
何となく安心させようとしていたことに気づけるようになります。
普通の人間ならそれでもよいのですが,
「教育者」「授業者」は違います。
ある計画でうまくいくような気がしても,決して油断をしてはなりません。
実施の直前まで,いえ,授業が始まってからも,油断は禁物です。
この授業で,生徒が理解しなければならないことは何か。
どのように理解することで,知識が定着するのか。
今回の授業で定着した知識は,いつ,どのようなかたちで活用されるのか。
先を見すえた授業の「経営」ができているのか。
とてもスムーズに授業が運び,満足そうに帰ってくる実習生に突きつけられるのは,
残酷な宣告です。
授業の「終わり」とは,「終わり」のことですか?
授業の「終わり」が「始まり」になっていない授業をしていませんか?
鎌倉時代の文化の学習を終えて・・・
生徒が,こんな質問をしてきたら,何と答えますか?
・・・・・運慶と快慶の関係は?
私からは,
・・・・・運慶や快慶らに仏像の受注がまわってきた背景は何ですか?
と聞いてみたいですね。
« 覚醒剤と中学校の生活指導 | トップページ | 過剰な自己陶酔感に危険性をかぎとる日本文化 »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「歴史学習」カテゴリの記事
- 皇族への言論弾圧(2018.11.30)
- 正倉院展を訪れて(2018.11.06)
- 日本における戦後の急速な発展を支えた教育とは?(2018.09.22)
- 近づきにくい人に近づく方法(2018.09.10)
- 縄文女子と飯盛山のさざえ堂(2018.08.15)
「社会科」カテゴリの記事
- 止まらないビールの需要減(2018.12.30)
- 皇族への言論弾圧(2018.11.30)
- ありえない課題設定・・・EUが1つの国?(2018.11.24)
- 1000人当たりの暴力行為発生件数ワースト5は(2018.10.29)
- 創造性を奪うポートフォリオ評価(2018.06.05)
「学力向上」カテゴリの記事
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
- 普遍性,汎用性があると誤解する「研究者」たち(2017.11.10)
- 小学校の授業を参考にする高校教師(2017.11.08)
- 最低限の教育の場の確保を!(2017.11.06)
「教職教育」カテゴリの記事
- 「総合的な学習の時間」の指導ができるように教育できるのはだれか(2019.11.24)
- 生徒との対話の中から自然に目標達成へのルートをつくる(2018.12.26)
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
「仕事術」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
「教師の逆コンピテンシー」カテゴリの記事
- 遠慮しないで情報を提供しろ!~いじめを見逃す環境との戦い(2018.12.29)
- 偶然の重なりと緻密な演出~インスタレーションから受けた刺激(2018.12.22)
- 子どもから有能感を奪い取る方法(2018.11.25)
- 量より質が大事なものと,質より量が大事なものとは?(2018.04.23)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
「教育実習」カテゴリの記事
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 鉄道トラブルと学校教育の劣化の共通点(2017.12.23)
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
「教員研修」カテゴリの記事
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 鉄道トラブルと学校教育の劣化の共通点(2017.12.23)
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント