教育に関する出版業界の不思議
小学校教育に関する本は,比較的たくさん出版されていることを,大型の書店や有名小学校の公開授業に行ったことがある人なら,よくご存じだろう。
中身を読むと,中学校の教科書より易しい言葉でいろいろと書かれている。
何だか情けない気になるのは,小学生向けの本のように,イラストがいっぱいである。
小学校の教師のレベルを下げているのは,出版業界がやっている「編集方針」ではないかとさえ思ってしまう。
子ども向けの本より子ども向けな本が売れるそうである。
一方で,先日,学校経営に関する本を読んでみたら,これも驚いたことに,ウェブ上に公開されている行政の資料をそのままコピペしたような章が「論文」などとして紹介されている。
ブックオフなどに行けば,そのうち100円で売られる運命にある本だと思うが,こういうどうでもいい本が出版される一方で,本当に本にする価値のあるものが出版されないというのが,この国の教育に関する出版の事情である。
売れない「専門書」より,とりあえず買い手がつく本が出版されるのは理解できるが,これだけ内容のない本を出版する会社があるというのはよく理解できない。
味も素っ気もない行政文書だが,そこには国の教育改革の流れを本当は左右すべきであるような重要な論点が,さらっとふれられていたりする。
ところがいざ,はじまってみると,「言語活動の充実」のように,「何だか良さそうなイメージのするフレーズ」とセットになっている,中身のない提案だけが通っていく。
「イメージに流されやすい」のは,この国に限らず,多くの人が陥りやすい「失敗」の原因の一つだろう。
広告業界の裏話を聞けば聞くほど,人間のまだ「情報」から「独立」できていない姿が明瞭になってくる。
「ウケがよい」ことばかりを重視する国の教育政策に,何の期待ができようか。
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