行事に熱が入る中学生が放つエネルギー
教職課程における「実践的な学習」として最も代表的なものは,「教育実習」である。
大学の教師は模擬授業くらいしかやることはないのか?
そうではない。
地元で最も「行事がさかん」な中学校と連携するのが一番である。
部活動は「放課後の活動」であって,子どもにとっては大事だが,教師はそこに力を削がれてはならない。
教育課程の確実な実施が求められる。
部活動に最も近いのが,「特別活動」の時間である。
「行事がさかん」な学校はたいてい,本来もっととるべき進路の学習や学級の時間を犠牲にして,行事の準備と運営に時間をあてる。
その方が成果が大きいから,「伝統」をくずさない。
生徒だけでなく,教師にも多大なエネルギーが必要だが,中学生が本気で乗ってくると,
教師などは目ではない。
すばらしい活動を展開する。
こういう姿をもしも「中学生らしい」と言わないとしたら,何をもって「中学生らしい」と呼べるのだろう。
総合的な学習の時間でそれを実現した稀有な中学校の事例を過去に紹介したが,
行事ならば,かなりの数の中学校で「燃える生徒像」をイメージすることができるだろう。
リーダーの成長はもちろん,クラスの団結,個人の目的意識の向上,集中力の向上といった目で見てわかる「成果」は,教科の学習活動にも波及していく。
私の赴任した一校目の中学校は,学習,部活動,特別活動,すべて自治体トップクラスであった。
特に,行事の盛り上がりは,他の中学校ではまず見られないほどの爆発力があった。
特別活動がさかんだということは,学習面への良い影響だけでなく,
下手な道徳の授業よりも道徳らしい「実践」がそこでは繰り広げられることになる。
道徳と特別活動の関係をより重視した教育課程を組んでいる中学校があるが,これは大正解だろう。
両者のねらいの区別をすることは大事だが,子どもにとってそんな些末なことは問題にならない。
学校生活をよりよく過ごしていこうとする意欲の向上を支えるのは,学校行事である。
そういう行事での中学生のエネルギーを全身で感じる時間を教師志望の人たちには経験してもらいたい。
教育実習期間には,こういう行事は行われていない。
教師が忙しくて実習生指導どころではないからである。
これは実はたいへん残念なことである。
自分の拙い授業の前でしゅんとしている中学生のイメージしか持てないで教師になった人間と,行事で燃える中学生を自分の目で見て知っている人間とでは,教師になってからの「子どもへの期待感」のもち方が全然違ってくるだろう。
教師が発する「期待感」も,子どもを成長させる重要なファクターの一つである。
「どうせこの程度だろう」なんて心で見下してくるような教師に,子どもをいい方向へ感化する力などない。
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