「ゆとり教育はダメだ」という「あせり」感が目先の数字を改善する
「ゆとり教育」を評価する声も出始めている,という記事が目にとまりました。
内容は,学力の問題から逸脱してあくまでも「生きる力」の面に光をあてるものなので,私が予想していたものと違っていたのですが,文部科学省の「基本方針」は「ゆとり」のときも「ポストゆとり」になっても変わっていないことを指摘しているのは重要なことです。
PISA型学力の伸びに関する私の考えは,学力低下の危機感から「ポストゆとり」の教育への転換が求められ,学習指導要領が改訂され,教科書が変わり,教師も勉強し直さないといけなくなったことが背景にある,というものです。
危機意識が仕事の見直し・改善・充実を促し,一時的には成果が上がる,というのは,
教育現場だけでなく,どの業種でも言えるのではないでしょうか。
マンションの勧誘電話が頻繁にかかってくる背景には,いろんなことがあるのが想像できます。
学習指導要領が変わるときが,教師たちが一番勉強し直さないといけないときなのです。
免許更新講習などやめて,10年経験者研修を継続することを私は主張しましたが,
ほぼ10年の間隔で改訂されることをふまえ,学習指導要領改訂期に,すべての教師が研修を受けるようにすべきだ,という考え方も大事だと思われます。
もちろん,意識の高い教師,学び続ける意欲や使命感をもっている教師は,自腹を切って各研究会に参加しています。
しかし,すべての教師ではない。
もし,すべての教師が同じ時期に研修を受けるとすると,そもそも施設などのキャパシティがない。
だから,時期をずらして研修できる免許更新講習のようなかたちになってしまう。でも,「学ぶべき時に学んでいない人」を放置する結果にもなってしまう。
私なりの対策は,ネット上でいつでも閲覧できる「講習」を用意して,簡単なレポートを全教員に課すことで,かろうじて,同じ質の教育を提供できることが保障できる,というものです。
いずれにせよ,「大昔のままの教え方でよい」「教科書が出てから考えればよい」「教科書会社の指導書どおりにやっていればいい」では通用しなくなった現実が,ようやく教師たちに意識づけられたことを「学力向上」の要素と考えてみたいのです。
教師が変われば学校が変わる。生徒が変わる。
よく言われることですが,残念ながら,危機意識に伴う一時的な「あせり」によって「ゆとり」を乗り超えた,と言っているうちはダメなのです。
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