教師の「個」の力に依拠する小学校の教育モデルの終焉
私の過去の記事で多くの方に読んでいただいているもののうち,
少なくないのが,
「小学校教育の問題」にかかわるものです。
たとえば,「担任のはずれ」の問題。
保護者としては,不公平感があまりにも強く,4月から「担任外し」の「運動」が起こる学校もあるようです。
こうした問題に,学校側がとる対策として増えているのが,
「1年ごとの担任交代=クラス替え」です。
どのくらいの小学校で,これが実施されているかわかりませんが,
昔は少なくとも「低学年」「中学年」「高学年」のそれぞれ2年間はクラス替えがなく,同じ教師が担当したものです。
しかし,「年間指導計画」だったり「評価計画・評価規準」などを提出しなければならなくなって,
みんながみんな同じような指導と評価をすることで,
「だれがやっても同じ」が原則の教育になり,
それなら1年交代でもいいじゃないか,だれがやってもいいじゃないか,ということになりました。
本当の意味での教師の「特色」「長所」「創意工夫」が発揮できない仕事場になってしまいました。
頻繁に担任が変わると,
「この先生のおかげでこんな力がついた子ども」とか,
「この先生のおかげで本当に学力がつかなかった子ども」の区別がつけられないようになり,
教師は安心して手が抜けるようにもなったのです。
もしこのような体制をとるのであれば,
もはや「学級担任制」にこだわる必要はないでしょう。
「学級担任制」のよさはどこにあるのか。
「教科担任制」にすると,どんな問題が発生するのか。
両方を天秤にかけたとき,少なくとも,高学年における「教科担任制」の実施は
法律でしばりをかける方向にいくのではないでしょうか。
最終的な決断の最大の根拠は,「個」の力ではどうにもならない,というものになるかもしれません。
ここから先は,フィクションです。
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英語の授業を担当できる小学校教師は,留学の経験がある者に限ります。
国語と社会科の授業を担当できる小学校教師は,5タイプの小論文で評価がAの者に限ります。
算数の授業を担当できる小学校教師は,指導法における基礎知識に関する試験で,評価がAの者に限ります。
理科の授業を担当できる小学校教師は,10種類の実験の実技テストで,評価がAの者に限ります。
・・・そして,これらの授業を担当する人間の多くが,外部からの非常勤講師に変わっていきました・・・。
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