小学生は社会科の学習が苦手で当たり前
理科や算数なら,どこからどう見ても「小学生レベル」の学習内容として扱うことができる。
しかし,社会科ということになると,対象となっているのは「子ども社会」ではなく「大人社会」だから,それは難しくて当然である。
小学校の教師の中には,「子どもは社会科が苦手」だといって嘆く人もいるらしいが,
そもそも教師自身も完全に理解しているとは言えないだろうし,決着がついていない問題,解けていない疑問もたくさん残されているのが「社会」科である。
本当に「分かった」と言える気がしない,という子どもは,実はとてもとても鋭く,正しい認識が持てている「大人以上の存在」だと思う。
読書編で紹介したい内容だが,
たとえば6年生の歴史では,
「源頼朝はなぜ鎌倉に幕府をおいたのだろう」
という学習課題を設定する場合がある。
小学生でも,京都から離れているメリットとデメリットは何となくわかるだろう。
教科書では,鎌倉の地形を鳥瞰図などで示しており,
「三方を山で囲まれ,海が開けている」という模範解答らしきものが用意されている。
この程度の答えで満足しているようでは,「社会科が得意」などとは呼べない。
鋭い子どもなら,「山で敵が防げるのか」「海から一斉に船で攻め込まれたら逃げ道がないのではないか」
と疑問に思うはずである。
「海からの攻撃」に関しては,鎌倉の前に広がる由比ヶ浜が,遠浅の浜であることから,攻める側にとってなぜ不利になるかは海水浴をしたことがある子どもになら納得させることができる。
では,「山で防げるのか」の方はどうか。
ちなみに,高校の教科書だと「山」ではなく「丘陵」と表現されている。
ただ,これでも同じである。「丘陵」で鎌倉を守れるのか。
義経の「逆落とし」(一ノ谷の戦い)を知っている子どもなら,山から大軍が下りおりてくるイメージができるだろう。
ただの「山」では,防御にならないのである。
防いでいるのは,「山」ではない。
それは何か・・・。
・・・・興味のある方は,読書編をご覧いただきたい。
« 小学校社会科学習指導要領補説=昭和23年 に示された「社会科学習の系統」 | トップページ | 小学校社会科学習指導要領補説=昭和23年 に示された「社会科の方法」 »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「学習指導要領」カテゴリの記事
- なぜ新しい学習指導要領が失敗に終わることがわかっているか(2018.01.17)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
「歴史学習」カテゴリの記事
- 皇族への言論弾圧(2018.11.30)
- 正倉院展を訪れて(2018.11.06)
- 日本における戦後の急速な発展を支えた教育とは?(2018.09.22)
- 近づきにくい人に近づく方法(2018.09.10)
- 縄文女子と飯盛山のさざえ堂(2018.08.15)
「社会科」カテゴリの記事
- 止まらないビールの需要減(2018.12.30)
- 皇族への言論弾圧(2018.11.30)
- ありえない課題設定・・・EUが1つの国?(2018.11.24)
- 1000人当たりの暴力行為発生件数ワースト5は(2018.10.29)
- 創造性を奪うポートフォリオ評価(2018.06.05)
「学力向上」カテゴリの記事
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
- 普遍性,汎用性があると誤解する「研究者」たち(2017.11.10)
- 小学校の授業を参考にする高校教師(2017.11.08)
- 最低限の教育の場の確保を!(2017.11.06)
「教職教育」カテゴリの記事
- 「総合的な学習の時間」の指導ができるように教育できるのはだれか(2019.11.24)
- 生徒との対話の中から自然に目標達成へのルートをつくる(2018.12.26)
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
「小中連携」カテゴリの記事
- 中学校化している?小学校の授業(2018.10.15)
- なぜ学習指導要領が「小学校寄り」になるのか?(2018.10.13)
- 小学校英語教育の最大の欠点(2018.08.11)
- 中1ギャップを考える前提としての小中ギャップ(2018.05.28)
- 小学校に望む本当の「働き方改革」=小学校が変われば「中1ギャップ」解消に一歩近づく(2018.01.30)
「教育実習」カテゴリの記事
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 鉄道トラブルと学校教育の劣化の共通点(2017.12.23)
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
この記事へのコメントは終了しました。
« 小学校社会科学習指導要領補説=昭和23年 に示された「社会科学習の系統」 | トップページ | 小学校社会科学習指導要領補説=昭和23年 に示された「社会科の方法」 »
コメント