英語教育や道徳教育よりも重視すべきこと
英語教育や道徳教育を重視すべきなのは言うまでもないが,
仮に英語を中心に英語の授業をしたとしても,
道徳の時間を「特別の教科」として授業をしたとしても,
教える人間が変わらない限り,何の効果もないだろう。
これは,「ゆとり教育」で実践済み,というか,実験済みのことである。
「ゆとり」のもとで,どのような教育がなされるべきだったか,
実際に,どのような教育がなされたかをしっかり検証しなかったために,
同じようなことの繰り返しが起こる。
間もなく,学習指導要領実施状況調査が行われる。
前回までは教育課程実施状況調査と呼ばれていたものである。
生徒はおそらく学校における学習の実態を一連のアンケートで明らかにしてくれるだろう。
長い目で見れば,
全国学力調査が廃止になる方向に動き,
全教科が対象となる学習指導要領実施状況調査が,各自治体の判断で基本は全員を対象に実施される方向となるだろう。
大切なのは,生徒の結果ではなくて,
教師の指導過程であることは,もはや隠しようのないことで,
それこそが本当の意味での調査対象にならない限り,
学習指導要領を改訂しても何も変わらないわけである。
社会科の事例でいえば,
20年前の「教科書ワーク」と今のそれを比べてみてほしい。
何がどの程度,変わっているだろうか。
教科書をもとにして授業を進めるのは当然かもしれないが,
「教科書」だけが教材となったり,
「教科書」を使って配布したプリントの穴埋めをしたりといった授業が繰り返されている状況では,学習指導要領が示している目標を達成することは難しい。
しかし,今の今まで,大多数の教師の「指導」を変える手立てが見つからなかった。
全国的な中学校の社会科の研究会における研究授業の質をふり返ってみれば,毎年劣化しているというのが「ホンネ」だろう。
だれもそういう「ホンネ」をもらすことができないというところは,戦時中の軍隊ととてもよく似ている。
研究や研修が,本当の意味での授業改善に結びつかない。
だからこそ,無免許で教師が英語を教えても,
定期考査の結果が「本物の英語の先生」と変わらない,という結果が起こる。
自治体は,生徒の結果の前に,教師がどのような授業をしているかという調査結果を堂々と示すべきである。
« すき焼きよりおかゆの方が体にいい | トップページ | 批判的精神を養うためでなければ,「詰め込み歴史教育」は逆効果になる »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「学習指導要領」カテゴリの記事
- なぜ新しい学習指導要領が失敗に終わることがわかっているか(2018.01.17)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
「教育改革」カテゴリの記事
- 改正教育基本法第16条の問題点(2018.12.28)
- 今,手を抜いていると,公教育の民営化が本格化したとき,・・・(2018.11.24)
- 国後島で考えたこと~日本の教育(2018.10.02)
- 都合の悪いことに目を向けさせなくする教育(2018.09.08)
「社会科」カテゴリの記事
- 止まらないビールの需要減(2018.12.30)
- 皇族への言論弾圧(2018.11.30)
- ありえない課題設定・・・EUが1つの国?(2018.11.24)
- 1000人当たりの暴力行為発生件数ワースト5は(2018.10.29)
- 創造性を奪うポートフォリオ評価(2018.06.05)
「社会科教師の逆コンピテンシー」カテゴリの記事
- ありえない課題設定・・・EUが1つの国?(2018.11.24)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- アメリカの反知性主義を輸入した人たち(2017.06.28)
- 選挙が違憲だと,国民審査が機能しなくなる?(2017.06.01)
- 「アカデミアの世界」からこのブログへ投げかけられた言葉とは?(2017.05.29)
「「ゆとり教育」」カテゴリの記事
- 「働き方改革」の前に必要な「学び方改革」(2017.07.01)
- 義務教育でアクティブ・ラーニングに取り組ませる目的(2017.05.21)
- 中学校の先生は,同時にいくつの仕事を進めているか(2017.05.01)
- 理解するよりも誤解する人が多い教育論(2017.03.13)
- 小学校による子どもの違い(2017.03.09)
「学力向上」カテゴリの記事
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
- 普遍性,汎用性があると誤解する「研究者」たち(2017.11.10)
- 小学校の授業を参考にする高校教師(2017.11.08)
- 最低限の教育の場の確保を!(2017.11.06)
「教職教育」カテゴリの記事
- 「総合的な学習の時間」の指導ができるように教育できるのはだれか(2019.11.24)
- 生徒との対話の中から自然に目標達成へのルートをつくる(2018.12.26)
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
「仕事術」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
「教師の逆コンピテンシー」カテゴリの記事
- 遠慮しないで情報を提供しろ!~いじめを見逃す環境との戦い(2018.12.29)
- 偶然の重なりと緻密な演出~インスタレーションから受けた刺激(2018.12.22)
- 子どもから有能感を奪い取る方法(2018.11.25)
- 量より質が大事なものと,質より量が大事なものとは?(2018.04.23)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
「道徳」カテゴリの記事
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 五輪ボランティアの数字を見て(2018.12.27)
- 南青山に似た環境の公立学校は,頑張った。(2018.12.23)
- チコちゃんに叱られる~おやじギャグが言える年齢になると,ホンネも漏れやすい(2018.11.11)
- 道徳教育が成立するための条件とは(2018.10.31)
「教育実習」カテゴリの記事
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 鉄道トラブルと学校教育の劣化の共通点(2017.12.23)
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
この記事へのコメントは終了しました。
« すき焼きよりおかゆの方が体にいい | トップページ | 批判的精神を養うためでなければ,「詰め込み歴史教育」は逆効果になる »
コメント